【進撃の巨人】 NTEOTW KYHU season3 (ページ18)

今日:4 hit、昨日:2 hit、合計:13,025 hit

29 上官と部下① ページ18

・

それからミランに会うことなく、
私は主席で卒業し、兄のいる調査兵団に入団した。

やっと、父と兄と同じ自由の翼を背負える。

そんな期待を膨らませて入団式に参列し、私は兄・ミリが率いる第二分隊ではなく、第三分隊に所属になった。

その晩、兵舎の食堂で新歓が行われた。新兵は酒を飲める者がほとんどいないため、続々と酔っ払っていいく上官を相手するばかりで、顔を引きつらせていた。が、その間にも同期で会話を交して、同期の親睦も深めていった。

ウィルは先程から、他の同期の話を聞きながらもある人物を目で追っている。

言うまでもなく、彼女の兄だ。兄は私に気づいていないのだろうか、兵舎に着いてから兄がこちらを向くことがない。

「兄さん！！」

食堂を出ていく背中を追う。

「兄さん！待ってッ！」

一度目の呼びかけではその足が止まることなく、二度目でやっとその足が止まる。

「兄さん…私も兄さんと同じ調査兵になったよ」

「＿＿＿＿＿＿＿＿＿のに」

「え？」

背を向けたまま発せられた言葉は、上手く聞き取ることができない。

「兄さん、私頑張ったんだよ？

父さんと兄さんと同じ首席も取ったんだよ？

「なんで、お前まで…ここに来たんだよ」

ただ、よく頑張った、と褒めて欲しかっただけなのに。力なく発せられた思わぬ言葉に、呆然とする。

やっと振り返った兄は、眉間に皺を寄せ悔しそうな表情をしていた。

「なんでって、兄さん…

「もう、ここに来たならお前の兄じゃないよ。

僕は調査兵団第二分隊長で、君(・)は第三分隊の兵士だ。」

上官と部下…

そんなこと考えれば分かったはずだ。
兄と同じ場所、兄と一緒にいられる、そんなふうに考えていた自分が馬鹿みたいだ。

ここはそんなに甘い場所じゃない

兄の顔が痩けて、以前より力なく見えたのは気のせいではないかもしれない。

兄の言葉に、表情に胸をぎゅっと締め付けられるような感覚になった。
男子棟へ向かう兄の背中を見つめながら、一筋の涙がこぼれた。

前回の壁外調査で兄の最後(・・)の同期が亡くなった、という話を後から聞くことになる。