傍にいる。 (ページ22)

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廿壱ページ22

伏黒side

部屋の中心部で座り込み、振り返る容姿が見える

恵「ッ！A！」

『黒…？』

五「恵、よく見て。」

五条先生は冷静に指示を出す
言われた通りに部屋をよく見ると徐々に赤い縄のような物が部屋中に張り巡らされていることに気付いた

それでいて相当な呪力量が感じられる

五「Aの術式、呪縛に相応するものだね。」

早く助けなければ、という思いが段々と積み上がる
しかしその反面、五条先生が隣に居ることの安心感がほんの少しだけあった

何とかしてくれる、と心の中で信じているからだ

すると突如Aの腕が動き始めた

そして気付く、手元には刃のような鋭利な物が握られていることに

それは上に上にと持ち上がり

勢いよく下降した

『う"ｯ…！』

ザクり、と切れるような音に湿った音が混ざる

二度、三度とそれは繰り返される
そこで理解した

恵「操られて…るのか…？」

その言葉を口にした時ピタリと動きが止んだ

［あら、お友達かしら？］

ふと聞こえたのは若い女性の声

出てきた女性の呪力の凄まじさは特級と対峙した時とはまた別の恐怖を感じる

五「…悪縷か。Aの身体を乗っ取ろうと考えているね？」

［ええ、その通りよ。殺す気は無いから、安心してちょうだい？意識を手放してもらうだけでいいの。寝ている間だとこの子ダメだから］

恵「ｯ！玉─

五「待って」

五「君がその子を狙う目的は？」

［この子は優しいからよ］

五「随分人間らしいね」

［生贄となり悪神と化した私、この村を呪い民を殺し、怒りを収める為と生贄を授ければ私がどうとでもなると思っていた村民よ］

［そこでの生贄がこの子よ。この子は呪力も高い、私の未来を繋げられる唯一の身体なの。他の子じゃ私の呪力量には耐えられなくてボロボロになっちゃったもの］

そう語る悪縷という名の悪神は、使い古した玩具を思い返すようにそう言った

［海に沈められ、見放され、私という人間がいたことすら忘れ去られ、死んだ事を理解するまでに何百年かかったか］

［でもこの子は違ったわ、この子の眼は優しいもの。きっと私の全てを受け入れてくれる］

悪縷の言葉と感情は溢れかえるように肥大化していく
呪霊にも話せる者はいる
人型をするもの、或いは型が違うもの
そこに死ぬ迄の記憶が残っていることは
俺もあまり見た事がない

悪縷が生まれた根源が人であることは理解した
孤独で無惨、あまりにも酷な話だ

だがAを悪縷に渡す訳にはいかない