拾捌 ページ19
Aside
《足元を移す水面。水平線が揺らぐことも無くただ真っ直ぐ一本の糸の様に張られている。》
《何処までも広がる青空を下に白蓮はそこに居た。》
ここ、どこ…?
《辺り一面、目立った建物も何も無い。大海原に一人放り投げだされたようなものだ。》
《透き通る様な水、足を置くと花弁が散る様のように輪を描く水紋》
《不思議に思いつつ、心はどうも平常心とは言えない。妙にざわつくのだ。又、それは悪寒でもあった。》
ここ、変。現実じゃない
《その勘はあたり、白蓮が現実ではないと自覚した瞬間蒼空は忽ち常闇となり、水面は赤く揺らいだ。》
《悪縷だ。》
『悪縷…』
[あら、いらっしゃい。というよりかは私が呼び込んだんだけど…。]
《身構える白蓮を目の前にしてくつくつと上品に笑う。》
[そんなに身構えなくても、抵抗したってここは私の生得領域。貴女がどう攻撃してこようと効かないわよ。]
[交渉したいの。]
『嫌。』
[貴女の身体を私に頂戴?その身体を空け渡せば貴女の周りに危害を及ぼさないわ。]
[でも断るなら全員呪い殺す。どうかしら?]
[嫌と言える?別にそれが貴女の判断ならいいけれど…貴女が死体となってからでも私は貴女の体を乗っ取ることが出来るもの。]
[じゃあなぜ?…ふふ、それはだって、生きていたままの方が面白いじゃない。]
《淡々と独りでに話を進める悪縷は子供のようだ。》
『その前に祓う』
[出来るかしら?]
『出来る。』
[精々足掻きなさい?]
《離れていた魂が身体に戻るように、スっと目が覚める》
『…』
悪縷の交渉を破棄、する
《夜空には満月が高く昇る
朧雲が灯りをかき消す様に連なる》
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作者名:黒凛蝶 | 作成日時:2020年11月22日 0時