▽Story 1 : Monday ページ3
Day1
「水野さん、今日はもう上がっていいよ。お疲れ様」
「あ、はい！では先に失礼します」
キリの良いところで仕事を切り上げ、高校時代から使っているリュックを背負う。
私は関西でそこそこの大手企業の営業課で働いていて、ここに入社してもう4年になる。
高校を卒業してすぐに運良くこの会社から内定をいただけて、それからは稼ぎの一部を地元の母に仕送りしながら自分の生活をしていた。
幸い、社内の環境はとても良く、上司も優しい人ばかりだった。
私はこの仕事に誇りを持っているし、ここを紹介してくださった高校の恩師にも感謝している。
「お疲れ様でした！」
オフィスを出る前に扉のところで振り返って頭を下げ、挨拶をしてから廊下に出る。
そしてすれ違う警備員さんに会釈をしながら出口へ向かい、外気の肌寒さに身震いをして、両手をコートのポケットへ入れた。
まだ夕方なのに、今日は一段と寒い。
最近は寒暖差も激しいし、体調管理をしっかりしないと風邪を引いてしまいそうだった。
すっかり歩きなれた通勤ルートは、自宅のアパートへの一番の近道だ。
街灯は少なく、夜に女性が1人で歩くのは少し危険そうな場所でもある。
いつもなんとなく通り過ぎてしまう道だが、今日は違った。
「君……捨てられてるの？」
コンクリートの道の端。街灯の下にダンボールが置かれ、中からにゃあ、とか細い声が聞こえた。
「ごめんね…私、君を飼ってはあげられないんだ……」
まだ小さな子猫を優しく抱きかかえ、赤虎模様のふわふわとした頭を撫でてやる。
「次はごはん持ってくるからね」
再びにゃあ、と鳴いた声が心做しか寂しそうで、後ろ髪を引かれる思いで子猫をダンボールの中に戻した。
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