【d!】虹色の今日を【企画短編】 (ページ10)

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変わらない笑顔/htrn ページ10

「今年もここの桜、満開だね！」
　そういって笑うお前を見るのはあと何回だろうな。
　偶々同じ病院で、隣同士のベッドで、何なら家も隣同士で。そうした環境で俺らはいつも隣で育ってきた。幼稚園じゃ俺ら男に混ざって泥だらけになって帰って二人揃って怒られたり、小学校で俺が緑化委員会で花を愛でるようになって男子からハブられるようになると、何でかお前がめちゃくちゃ怒って仲直りさせられたり。中学に上がった頃にはお互い思春期に入り、登下校が一緒なだけで噂されて気まずくなったり、でも試験前にはどちらかの家で勉強会はしていた。高校は別々で、お互いに生活を楽しんでいて話す事は自然と減った。気づけば俺もお前も社会人になっていた。連絡先は持っていたけど特に連絡することもないし、今更何て送ればいいんだ。
　『花見しない？』
　軽快な通知音とともに送られてきたメッセージ。それは今まさに何を送ろうか迷っていた相手で、驚き思わずそのメッセージをタップしてしまえばアプリは無慈悲にも俺が見たことを知らせてしまう。いや急すぎだわ。久しぶりじゃねえのまず。メッセージ画面を開きっぱなしで葛藤していれば追加で送られてくる白枠の『既読無視？』。待てって。今頭ん中整理してるから。
『まず久しぶりからじゃねえの』
『確かに！』
『頭いいくせにそういうところはバカだよな』
『ひっど！というか花見！しないの！？』
『場所は？』
『いつものとこ』
その文に、また記憶が過る。俺らが物心ついた時からよく遊んでいた公園の二本の桜の木。それは互いに寄り添うように並び大樹と言っていいほど大きく、いつも満開の花を咲かせては散っていった。親に連れられて家族ぐるみでよく花見をしていたのも懐かしい。まあ、日によっては断る理由もない。
『時間とかは？』
『来週の今日！仕事は定時で終わるから一九時くらいでいい？』
『はいよ』
『お酒！持ち寄りで！』
『よろ！』
カレンダーで言われた日を確認すれば特に何もなく、定時に上がれるように俺が頑張ればいいだけだ。この日だけはクソ上司の頼みを回避してやる。