【d!】虹色の今日を【企画短編】 (ページ20)

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セミの鳴く声が鬱陶しい。どうしてこの国の夏はこうも纏わり付くような暑さが続くのだろう。そんなことを考えながら額の汗を拭った。

「鬱君鬱君。」
「なに？」
「あそこのコンビニでアイスを買って、食べながら帰りませんか？」

買い物をしたスーパーから家までの道。隣を歩く奥さんのそんな提案が可愛くて。
そうしよか、と答えれば、こちらを見上げていた大きな目が嬉しそうに細められた。

いい歳した大人二人がスーパーの袋を片手に、アイスを食べながら歩いている光景は、想像すると少し笑える。でもこうして夫婦で過ごす時間がこの上なく幸せだ。

…なんてあいつらに言ったら、
「ほんまに丸なったな、大先生！」
と馬鹿にされそうだな。

「ねぇ。」
「ん？」
「今日の夜もそうめんでいい？」
「ええよ。」
「いいの？」
「なんで？」
「だって最近、そうめん多いじゃん。」
「しゃーないやろ、こうも暑い日が続けば。それに俺好きやで、そうめん。」
「…私は鬱君のそういう所が好き！」

嬉しそうに笑った彼女は、アイスを食べるのを再開した。

今日も俺の彼女は可愛い。

そんな幸せを噛みしめて歩いていると、家の近くの商店街にある小さな書店の前に出た。照りつけるような太陽の光を浴びて店先に所狭しと並ぶのは何冊もの雑誌。たまたま目についたのは、白いドレスを着た笑顔の女の子が表紙のもの。…有名な某結婚式準備雑誌だ。もちろんAが手に取っているところは見たことがない。
何も考えず、そのまま通り過ぎようとした俺の隣。彼女も同じようにその雑誌に目を向け、足を止めていた。