6 Daiki 空港 ページ6
Daiki
ちょっと意地悪な質問だったかなって思ったけど、聞いてみたかった。
気持ちの整理、ちゃんと出来そう？って。
A「……うん、そうだね」
窓に顔を寄せ、遠くの景色を見ている。
街中の道だから、遠くなんてない。
景色に視点を合わせない、儚い横顔だった。
有岡「ピアスもじゃん」
A「うん……ピアスはね、お互いのを開けたから、こう触るだけで思い出すよ」
今日は何もつけてない耳たぶを、愛おしそうに触っている。
A「全部だよ……全部裕太くんとの思い出がある。
色んなもの、色んな場所、景色もだなー。
ねえ、成田空港行くって言っちゃったけど……」
その先を言いたくないみたいで、口を少し開けたままで、また窓の外を見ている。
A「ねえ、ハワイで、私の事思い出してくれてるかな」
有岡「さあ、どうだろうな。
思い出さないようにしてるとか。
だって、思い出したら楽しくねえじゃん」
A「そうだよね。
捨てようとしてる女の事なんて、思い出さないか。
有岡も、そうだった？
私の事、考えないようにしてた？
だから分かるの？」
急に俺に振られて、焦った。
有岡「まあ、俺の場合と違うけど。
今までありがとうって気持ちはあったよ」
A「どうしてフラれてばっかなんだろ。
ねえ、フラれた事ある？
ないか･･････」
有岡「……あるよ」
A「嘘･･･」
外を向いてた顔が、こっちを見てるみたいだ。
有岡「嘘じゃねえよ。
あるだろ、そのくらいは」
A「有岡はないと思ってた。
え？どのくらい付き合ってた？
結構長く？」
めちゃくちゃ食いついてきた。
有岡「付き合ってないけど？」
A「告白したのにフラれたって事？」
有岡「正確には、返事をちゃんともらってない」
A「なんでもらわなかったのよ」
有岡「いや、手紙で告白して、返事がこないって感じ」
A「ふふっ、手紙って。
え？小学校の時とか？
そんな告白の仕方、可愛いじゃん！」
面白がって、さっきの悲しい顔はどこ行っちゃったんだか。
有岡「いいだろ、別に。
高校の時だよ、わりいか」
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作者名：やまぱん
| 作成日時：2019年5月12日 17時
