3 Daiki ページ3
Daiki
慌てて俺も運転席から降りて、後ろのスーツケースを出した。
A「じゃあ…」
いつの間に、ダッフィーをしまったのか。
手を挙げ、小さく振っている。
有岡「あ、ちょっと…」
昨日、慌てて買ってきたやつ。
これなら、受け取ってくれると思って。
有岡「飛行機の中で食えよ」
A「あ、ありがと」
大好きなマーブルチョコレート。
もちろん笑顔なんてない。
バトンを受けとるみたいに、Aの手の中に移った。
すぐにバッグにしまわれ、自動ドアの中に消えて行った。
・
なんだか、あんまりいいお別れじゃなかった。
最悪。
近くのショッピングモールの駐車場に車を停め、Aが乗るであろうLCCの飛行機を見上げた。
グレーの空に飛行機がどんどん小さくなる。
キューって心が縮まって、ポカンと穴が開いたようだ。
・
家に戻る途中、キノコ公園の前辺りで、Aんちの前にあいつがいるのが分かった。
Aって、スタイルがいいやつが好きなんだよな。
顔が小さくて、スラッとしてて、カッコいい。
高木先輩も、そうだった。
自分ちの駐車場に車を停め、怪しいあいつに声をかけた。
有岡「何してんの？」
玉森「え、今日行く事になってるはずなんだけど」
有岡「なんか、言ってたな」
Aの為の嘘……
有岡「で、何か忘れ物？」
玉森「いや、電車で行くって言ってたから、駅で待ってたんだけど。
全然来ないし。
もしかして、辞めたのかなって」
有岡「連絡すればいいじゃん」
玉森「ブロックされてる」
有岡「まだ連絡先は残ってるんだ」
玉森「意味ないだろ」
有岡「おばさんに聞いたらいいじゃん。
教えてくれるかもよ」
玉森「ううん。いい」
有岡「えっ……」
玉森「決めてた」
有岡「何を？」
玉森「もう、関わらないって。
今日、駅で待っちゃったりしたけど。
俺に出来る事は、そのくらいだから」
有岡「なんか、ちょっとがっかりなんだよな」
玉森「え、何が？」
有岡「追いかけたりしないんだって」
玉森「さすがに、それは。
それに夏に終わってるんだし、もう……」
有岡「だよな。
わりぃ、電話……」
鳴ってもない電話に出るふりをして、その場から去った。
・
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作者名：やまぱん
| 作成日時：2019年5月27日 23時
