4 引越 ページ4
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マーブルチョコって……
子供の遠足じゃないんだから。
いまだにマーブルチョコをくれるのは有岡だけ。
でも、このガシャガシャって音が、少しだけ気持ちをあげてくれた。
ここ数カ月で、何度も行き来した成田と新千歳空港。
今回は、当分帰る予定はない。
帰れるとも思ってないし、今は早く仕事に慣れたいだけ。
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離陸してすぐ、イヤホンをつけて目を閉じた。
車の中で泣いてしまって、少し眠かったから。
着く頃には、気持ちが切り替わってるといいなって希望を込めて。
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やっぱり北海道は、空気がキリッとしている。
まだ雪が少し残ってるからか、その寒さが気持ちを引き締める。
空港には、会社を休んだお父さんが迎えにきてくれてて。
お父さんの車で不動産屋さんに行き、不動産屋さんと一緒にマンションに着き、中をチェックして鍵を渡された。
明日、色々な荷物が入るので、今日は、すぐに必要がないものだけ置き、お父さんのマンションに泊まる事になっている。
父「ホントに来ちゃったんだな」
A「うん……そうだね」
父「裕太くんの事だけじゃ、ないんだろ」
A「んー、どうだろ。
何だか分からないけど。
ほら、ホントは三人で住みたいっていうのが一番だったわけだし、なんともね、分からない」
父「お母さんが、お父さんと一緒に住まないで、あそこにずっといた理由知ってるのか?」
A「え?!知らない。
引越が面倒だからとかじゃないの?」
父「違うって。
お前を転校させたくないからだったんだぞ。
ずっとあそこで育って欲しかったからって。
お母さん自身が、故郷みたいなのがないから、小さい頃の友達がいないんだって。
あれ、Aが高校の時、突然いなくなった事あったろ」
A「うん」
父「あの時もな、小さい頃からのお友達がいっぱいいるから、ホントに良かったって言ってた。
たくさんのお友達が、探すの助けてくれて、ホントに助かったって」
A「そっ……」
父「まあ、決めた事だからいいけど、お母さんの気持ち……覚えておきなさい」
A「うん…‥‥分かった」
お父さんから、こんな真面目な話をされるのも初めてだった。
いつも家にいなかったし。
一人でちゃんとやっていかないとなって、改めて思った。
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作者名:やまぱん | 作成日時:2019年5月27日 23時