14 助手席 ページ14
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A「そろそろ七時か…
ねえ、今からホームセンターに行く?
で、帰りにおごってもらおうかな」
有岡「あ、付き合ってくれるの?」
A「有岡よりは、この辺の事分かるし。
勝手にうちの隣りに引越してきたのを、歓迎してるわけじゃないからね」
有岡「分かってる。
俺の自己満足」
A「じゃあ、行こ」
有岡「うん」
今日初めて、微笑み合えた。
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有岡の車は、雪道にも強い、四輪駆動なんだって。
セダンとSUVの間みたいなやつで、色は「ワイルドネスグリーン・メタリック」って言うらしいけど、簡単に言うと深緑って感じ。
有岡「どうぞ」
助手席のドアを開けてくれた。
今まで断ってきた手前、とても入りづらいけど
有岡「俺の車の助手席に、一番最初に乗って欲しいんだけど」
そこまで言われて、やっと助手席に乗る事にした。
自分も運転席につき、シートベルトをしめてこっちを見た。
有岡「すげー憧れてた。
あいつの助手席には、当たり前のように乗ってたのに。
いつも帰りにキスをされてて、今思い出すだけで、胸が痛い」
A「終わった事を、色々言わないでよ。
私だって思い出して、胸が痛いんだけど」
有岡「あ、ごめん」
A「右に出て」
そんな事思ってたなんて、知らなかったし。
見られてたのも、知らなかった。
だけど、中学三年の時、一番最初に助手席に乗せてくれる約束をした事を思い出していた。
あの頃は、幸せだった。
有岡は、私の事だけを見ててくれてた時期だから。
そして、私も憧れてた。
助手席から、有岡の横顔を見る事を。
裕太くんと付き合ってたけど、あの約束のせいで、有岡の車の助手席にいる女の子に嫉妬をしていた。
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ホームセンターで、タオル類、食器、洗剤、シャンプー等、細々買って。
いつだったか、お父さんが連れてってくれた、ジンギスカンに行ってみた。
二人で美味しいって言い合うのも、久し振りで。
すぐに、あの頃に戻ったみたいになった。
でもね、これは幼馴染としてでも、出来る事で。
特別な関係とは、ちょっと違う気がしてた。
まだ、100%心を許せるわけじゃなくて。
マンションの駐車場で、キスをしたそうな顔をしてたけど。
知らないふりをして、車から先に降りた。
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作者名:やまぱん | 作成日時:2019年5月27日 23時