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約束の六時前だったのに、すでに車の中に姿があった。



助手席側の窓を、コンコンと二回叩くと、スマホの画面から視線を上げた。

ニコッと笑い、運転席から降り、助手席側に回ってきた。





A「仕事、もう終わったの?」





大貴「うん、今日は外来の人少なかったし、早く終わった。

  そういえば、俺のLINE、ブロック解除してよ」





A「あ・・・でも・・・」





大貴「でもじゃねえし、スマホ貸して!」





私の手から、強引にスマホを奪い、自分のズボンのお尻のポケットに入れた。

そして、助手席のドアを開けてくれて「どうぞ」と案内した。





車の中は、大ちゃんの香りがした。

あの、オレンジとラベンダーがブレンドされた、アロマの香り。





A「この香り、いいよね。

  私も、買い足してるよ」






大貴「あっ、パスワードは?」






私の話、聞いてないし・・・




運転席に座った大ちゃんは、私のスマホをお尻から出し、早速いじりだした。





A「教えない」





チラッと私を見たけど、すぐまたスマホの画面を見て、画面の上で指を滑らせている。





大貴「おっ、開いた!

  どっちのダイキかなーって思ったら、俺の方だった」





パスワード、910415・・・



好きな人の誕生日とか・・・いい年して、何やってんだか。






大貴「えっと、解除してー

  試しに送ってみよ」





A「ちょっと、私のスマホ!返してよ」





大ちゃんの手の中にあるスマホを奪おうと、腕を伸ばしたら、その腕をギュッと引っ張られた。


バランスを崩した時に、唇に柔らかいものが触れた。




えっ!





大貴「俺の誕生日だった、ご褒美」





ご褒美って・・・何よ。





大貴「ついでに、写真見せて!」




あの時お揃いだったスマホを、まだ使ってるので、ちょっと反応が遅いらしく、指がイライラしてるっぽい。




そして、笑顔でゆっくりとスクロールしている。




大貴「やっぱ、ダイキくんの写真ばっかだな。

  これを見たかったんだけどね」





A「子供って、すぐ大きくなっちゃうって言うから、無駄にいっぱい撮ってるかも」





大貴「目元は、Aに似てるよな。

  男の子は、お母さんに似るていうし、うん、可愛い。

  これとか、写真貰っていい?」




見せられた写真は、私とダイキがアップで写ってる、昨日の誕生会の写真だった。





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作者名:やまぱん | 作成日時:2017年11月5日 12時

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