第七章 ページ23
顔を上げて視線が合って少ししてから、土方さんは言った
「ーーー桐生。此処にいる間は俺の指示に従ってもらう」
初めて名前を呼ばれた
土方さんに呼ばれた名前は、力強くそして小さな優しさを帯びて紡がれる
優しさは私の気のせいかもしれないが
その事が嬉しくて、嬉しくて
殺されないとわかった時よりも嬉しくて、不思議と心が満たされる
自然と口角が上がるのがわかる
この時代に来て、初めての心からの笑顔を土方さんに向けて
「ーーはい」
全てを込めて返事をした
「ーー(そんな顔も出来んのか)」
土方さんは少し驚いた顔をするも、私の返事を聞いて満足そうに小さく微笑む
あ、かっこいい
そして今まで静かだった周りの人達が一斉に騒ぎ出す
急な事だったため、ビクッと肩が跳ねた
「桐生くん。男所帯でむさ苦しいところだが、これから宜しく頼む!」
「はい。此方こそ宜しくお願い致します」
近藤さんの優しい笑顔を見て少し安心し、此方も挨拶をする
すると山南さんが私を見ながら言って来た
「桐生くん。貴女は未来から来たと仰っていました。ならば、私達の事はわかりますね?」
優しく微笑んではいるが、腹黒い山南さんの事だ、何を考えているのかわからない
だが、みんなの名前を言ってみろと言う事だろうかと解釈した私は頷いて、先ずは体ごと右を向いて本人の顔を見ながら順番に名前を言っていく
「新選組で預かってる雪村 千鶴ちゃん」
「三番組組長 斎藤 一さん」
「六番組組長 井上 源三郎さん」
くるりと方向転換し、次は左にいる人達の名前を呼ぶ
「一番組組長 沖田 総司さん」
「二番組組長 永倉 新八さん」
「八番組組長 藤堂 平助さん」
「十番組組長 原田 左之助さん」
そして最後に正面を向いて
「局長 近藤 勇さん」
「総長 山南 敬助さん」
「副長 土方 歳三さん」
みんなの名前を言い終えれば、山南さんはにっこりと笑いながら「当たっています」と言い
怖い。笑顔が怖い
腹黒い山南さん
なんて失礼な事を考えていると、ふと思ったことを聞くために土方さんを見て口を開いた
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作者名:ぷー | 作成日時:2017年8月11日 20時