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「どうだい、何か思い出したかい?」
与謝野先生は私の顔を覗き込みながら言った。
「いえ、何も……。さっきと同じです」
与謝野先生は安心した様にため息を吐いた。
「なら安全だね。しかし、複雑な出来事でも起きたか、よほど思い出したくないようだ。太宰達に報告に行くよ」
与謝野先生は少し歩いて立ち止まった。私もそれに倣う。
「そう言えば、あいつらの名前を教えてなかったね。太宰ってのは首や手に包帯を巻いてるやつさ。なんだって、自 殺マニアらしい。国木田は眼鏡をかけた几帳面そうなあいつだ。あいつは面倒だからな、関わらない方が良い」
与謝野先生は常時愉快そうに話した。
「太宰、国木田。失敗したよ」
事務室に戻ると、最初に会った白髪の少年と麦わら帽子の少年が立っていた。
「うーん、与謝野先生の異能力でダメなんて他に試しがないじゃないか。
どうするぅ? 国木田君」
「なんで俺なんだ。敦に聞け」
「僕に振らないでください! ひとまず与謝野先生が服を貸した方が良いかと……」
確かに私は黒いロングワンピースと下着しか着ていない。
「いえ、お気になさらないで下さい。私はこれで十分ですから」
慌てて拒否したが意味はなく、結局靴を貸してもらう事となった。
「第一回、記憶喪失美女の身の振り相談会〜」
「二回目はないだろ」
太宰の文句に国木田が華麗な突っ込みを入れる。
「で、どうします?」
麦わら帽子の少年、賢治が切り出した。
「ここに置くのは危険過ぎる。却下だ」
国木田が誰も出していない案を却下した。
「マフィアへ連れ戻すのもリスクが大きいですよね、記憶が戻っていない様ですし」
なんだかんだで白髪の少年、敦も心配し始めた。
「いっそ僕の故郷に連れて行きましょうか。案外合ってるかも知れませんよ?」
賢治は純粋過ぎるだけなのだと思う。
「まぁ、賢治君の案が今のところ最善だね」
故郷と言うと、やはり田舎なのだろうか。田舎は少し嫌だ。虫が出そうだ。
「この辺りの会社に就職させる事は出来ないのかい? 彼女がマフィアだって事は広く知られてはいないだろ?」
与謝野先生は一番良い案をあげてくれた。
「まぁ、与謝野先生の案が良いね。今日中に求人を探して出来そうな仕事を見付けよう」
太宰がまとめると、五人は頷いた。
「そう言えば、新聞社がライターを探してるって言ってましたよ。新聞社はどうです?」
賢治はつなぎのポケットから皺のついた紙を取り出した。
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蒔愛(プロフ) - 日常的さん» いえ、文ストの中でも好きなキャラクターです。何かお気に障ることがございましたか?良ければお教えください。 (2018年4月28日 0時) (レス) id: 0e9106e5ea (このIDを非表示/違反報告)
日常的 - 作者さんは樋口が嫌いなんですか? (2018年4月28日 0時) (レス) id: f7c5d2c875 (このIDを非表示/違反報告)
蒔愛(プロフ) - 二葉さん» お読みいただきありがとうございました。感想ありがとうございます。 (2018年1月21日 13時) (レス) id: 0e9106e5ea (このIDを非表示/違反報告)
二葉(プロフ) - 拝読させて頂きました。切なさで一杯になり思わず涙が溢れましたが、4章の後半に差し掛かった頃には切なさとはまた違った涙が溢れるばかりでした。迚も心に残る良い作品でした。 (2018年1月21日 13時) (レス) id: aa4e1ad83a (このIDを非表示/違反報告)
蒔愛(プロフ) - ギオさん» お読みいただきありがとうございました。感想ありがとうございます。 (2018年1月17日 7時) (レス) id: 0e9106e5ea (このIDを非表示/違反報告)
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