【2j3j】勘違いされる系Vtuberは気にしない【男主】

裏切り　剣持視点 ページ12

鈴中Aと僕が出会ったのは1年ほど前。

おすすめに出てきた彼女の切り抜き動画を見たのが始まり。

年齢は公表されていないが恐らく16歳ほど、華奢で弱々しいが楽しそうに雑談しているのが印象だった。

そこからはなんとなく気になって自ら検索して動画を見るようになって、いつの間にか彼女の配信を見るのが一日の楽しみになっていた。

彼女の配信は雑談がメイン、視聴者からのコメントに答えていくスタイルだ。

彼女と視聴者の関係はしっかり築かれていて配信はいつも大盛況。

何度か自分もコメントをしようと思ったが、躊躇してしまい出来ずにいた。

視聴者がコメントして彼女が答える、視聴者がまた質問をする、彼女が笑う。

そんな何気ない配信の一コマが今となっては宝物のように感じた。

コメントの中には彼女を傷つけるようなものも見受けられたが、やけに団結力の強い視聴者たちによって彼女の目に入る前に消し去られていった。

彼女のコメント欄に痕跡を残すことを恐れていたが、傷つく彼女なんて見たくない。

コメントするのを恐れていた自分も荒くれ者の排除に加わるようになった。

僕がコメント欄にいても気づかれることもなく、僕の名前は大量のコメントに怒涛の勢いで流されていった。

彼女を傷つける人間はどんな奴でも許さない。

僕の日常に特別な色をつけてくれた天使、これからもずっと彼女の笑顔を見ていたいと思った。

僕の大切なAさん。

どうしていなくなってしまったの。

彼女が卒業を宣言した日のことはよく覚えている。

軽い口調で発せられた言葉に最初は理解が追いつかなかった。

徐々に頭が理解し始めて体が鉛のように重くなる。

言い間違いだよな？お願いだから何かの間違いだと言って。

そんな僕の願いも虚しく彼女はそのまま消えてしまった。

そこからは、色づいていた世界が魔法が解けたようにまた普通の日々へと戻った。

鈴中Aを追っていた期間は1年と15日。

あれは幻だったのかというほど短く儚い日々であった。

Aさん会いたい、また声が聞きたい、戻ってきて。

彼女への想いが溢れて止まらない。

時間が経つにつれて想いがどんどん違う感情へ塗り替えられていくのを感じる。

どうして僕を置き去りにして一人で消えてしまったの。

許さない、許さない、

彼女を失った悲しみが、自分を置いていった彼女への憎しみへと姿を変える。

彼女を失った傷が癒えない、そんな時に出会ったのが彼女と同じ名前のあいつだった。

▽▽→←▽▽　加賀美視点

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