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45.恋心 ページ47










「分かってます」
「え?」
「ひろが何も悪くないってこと」




彼女は黙って私の話を聞いていたけれど、静かにそう言い、指の腹で涙を拭うとゆっくりと話し始めた。




「もうずっと遠い昔のことのように思えて……何から話せばいいのか……」
「……」
「じゃあ……そう……私のことから話しますね」
「……」
「どこまでひろから聞いているのか分かりませんが……私の両親は何年も別居していた時期があって……父が兄と、私は母と私が小学校低学年くらいまで別々に暮らしていたんです。また一緒に住むことになって、その時初めて兄に会いました」




え?そうだったの……?




「ある日突然中学生のお兄ちゃんができたんです。私達は7つ歳が離れていましたから。
“よろしくね、宙”そう言って私の頭を優しく撫でてくれた兄が大人に見えて、とてもドキドキしたのを覚えています」
「……」
「まだ子供だったひろは、両親の別居のことや兄のことを詳しく知らないと思います」




宙さんはそこまで話すと大きく息を吐いた。
先生からは年の離れた兄がいるとだけ聞いていたから、彼がどこまで宙さんの家庭事情を知っていたのかは分からない。




「こんな話、絶対にありえないと思われるかもしれませんが……」




彼女は躊躇いがちにそう呟くと、じっと前を見すえた。




「初めて会った時から、実の兄を異性としてずっと意識してきました……男性として好きだと確信したのは中学に上がった頃です」




そんな……じゃあ北山先生は?
先生は、高校の時に告白して付き合い始めたって言っていたけれど、その時すでに宙さんはお兄さんが好きだったということだろうか?
酷いよ、そんなのとても耐えられない。
先生の気持ちを想ったら胸がぎゅっと締め付けられる。




「ひろと付き合い始めた頃に、私達は初めて関係を持ちました」
「……!」




なぜそんな残酷なことを……?




「本当に……私は責められて当然なんです……でも自分達がなぜこういう関係になったのか、上手く説明できないんです……断ち切るべきだと分かっていても、私は兄から離れられなくて……また兄もそうだったんだと思います」
「……」
「兄との行為に溺れながらも……ひろが大好きだった。私の隣にはいつもひろがいてくれて、一緒にいる時間は私にとって宝物でした。ひろといる時間だけは背徳感を忘れることができました。ひろは私の心の支えで……本当にかけがえのない存在だったのに……」






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設定タグ:北山宏光 , 玉森裕太 , Kis-My-Ft2   
作品ジャンル:恋愛
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siori(プロフ) - ゆうさん» ゆうさん、こんにちは!お待たせしてしまってごめんなさい。心がヒリヒリしながらも楽しんでいただけているのであれば、これほど嬉しいことはありません(T^T)今日、移行しますね!いつもコメントありがとうございます! (2022年9月9日 17時) (レス) id: 61df7685fa (このIDを非表示/違反報告)
ゆう(プロフ) - こんばんは!更新うれしいです。sioriさんの作品が大好きです。主人公ちゃんの北山先生への想いに涙でした。宙さん今は絵が描けていてよかったです。先生と主人公ちゃんも笑顔になってほしいなと思います。心が痛くなりながらもドキドキしながらいつも楽しみにしてます (2022年8月24日 22時) (レス) @page50 id: d56bd6cb16 (このIDを非表示/違反報告)
siori(プロフ) - ましろさん» ましろさん、え!?もうひと山ですか(笑)私の話なんて全然大したことなくて(笑)北山くんが凄いからですよー!彼の凄さは私も痛感してます!でも、私はましろさんが帰ってきてくれたことがなによりも嬉しいですっ(涙) (2022年8月18日 20時) (レス) @page16 id: 61df7685fa (このIDを非表示/違反報告)
siori(プロフ) - ★mmiioo★さん» ★mmiioo★さん、ありがとうございますっ、大きいんですけどね。相手が強すぎてどうなるかというところです(涙) (2022年8月18日 19時) (レス) @page16 id: 61df7685fa (このIDを非表示/違反報告)
ましろ(プロフ) - 次の章で終わるなんて言わずにあともうひとやま....笑。久々の現場行きまくりで改めて彼の凄さとかっこよさを痛感し栞さんのお話の凄さも久々に訪れて痛感し新しいお話が読めることが本当に嬉しいです。どのお話も心臓痛くて大大大好きです。愛重く愛しております。 (2022年8月17日 9時) (レス) id: 6b1f0a89b4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:siori | 作成日時:2021年11月6日 21時

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