33.告白 ページ35
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「悶々と悩んでいても仕方ない、もう自分の目で確かめるしかないと思った。部屋に乗り込んで2人に訊こうって」
「……」
「でも流石に……腰が引けて、暫くドアの前に立ち尽くしていたけど……意を決してインターフォン鳴らしたんだ。
でも返事はなかった。出てこないなんておかしいだろ?中にいるのに。
何してんのか最悪な考えが浮かんだ……今思えば、その時すでに、宙に対して不信感しかなかったんだろうね。だから俺は、また宙をつけて……あの日……」
「……」
「ドアに鍵がかかっていなかったんだよ……こんなことやっちゃいけないって頭では分かってたのに、音を立てないようにそっと中に入ったんだ。心臓がバクバクして破裂しそうだった……そうしたら……」
先生の顔が苦悩に歪む。
「ドアの向こうから……ベッドの軋む音と……誰よりも愛してる……って……宙の声が……」
そう言い、先生は自分の頭を掻きむしった。
「その瞬間……頭の中が真っ白になっちゃって、逃げるようにその場を離れた……家に着くまでのことは何も覚えてない」
「……」
「宙にとって俺は何なのか?何でこんな目に合わないといけないのかって、あの日はそんなことばかり考えていたよ。
愛情が憎しみに変わって……裏切られた哀しみとか……そんなものに支配されていったんだと思う」
私が先生に兄がいることを話した時、少し様子がおかしかった理由が分かった。
それにしても……
思ってもみなかった先生の過去に、心臓が大きく鼓動を打つ。
ただ苦しかった。
苦しくて切なくてどうしようもない。
それからどうなったかを訊いて本当にいいんだろうか?
「何も知らない宙は……次の日にアトリエにやって来て……いつものように俺に笑いかけたんだ。何も変わらない笑顔でさ」
「……」
「その笑顔を見たら……なんて言うか……」
「……」
「理性がぶっ飛んだみたいに自分が保てなくなって……俺は……宙の気持ちを訊いてやることもせず、この世の中のありとあらゆる酷い言葉を彼女にぶつけた」
先生は「どうしても許せなかった」と言った。
「泣きじゃくる宙を自分勝手に抱いて。泣いて、声が枯れても……俺は……一晩中……」
瞬きとともに、先生の瞳に張った涙の膜がこぼれ落ちた。
「A……」
「……はい」
「宙は、自分で自分の目を潰したんだ」
「――……!」
その思いもよらない言葉に、思わず両手で口を覆っていた。
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siori(プロフ) - ゆうさん» ゆうさん、こんにちは!お待たせしてしまってごめんなさい。心がヒリヒリしながらも楽しんでいただけているのであれば、これほど嬉しいことはありません(T^T)今日、移行しますね!いつもコメントありがとうございます! (2022年9月9日 17時) (レス) id: 61df7685fa (このIDを非表示/違反報告)
ゆう(プロフ) - こんばんは!更新うれしいです。sioriさんの作品が大好きです。主人公ちゃんの北山先生への想いに涙でした。宙さん今は絵が描けていてよかったです。先生と主人公ちゃんも笑顔になってほしいなと思います。心が痛くなりながらもドキドキしながらいつも楽しみにしてます (2022年8月24日 22時) (レス) @page50 id: d56bd6cb16 (このIDを非表示/違反報告)
siori(プロフ) - ましろさん» ましろさん、え!?もうひと山ですか(笑)私の話なんて全然大したことなくて(笑)北山くんが凄いからですよー!彼の凄さは私も痛感してます!でも、私はましろさんが帰ってきてくれたことがなによりも嬉しいですっ(涙) (2022年8月18日 20時) (レス) @page16 id: 61df7685fa (このIDを非表示/違反報告)
siori(プロフ) - ★mmiioo★さん» ★mmiioo★さん、ありがとうございますっ、大きいんですけどね。相手が強すぎてどうなるかというところです(涙) (2022年8月18日 19時) (レス) @page16 id: 61df7685fa (このIDを非表示/違反報告)
ましろ(プロフ) - 次の章で終わるなんて言わずにあともうひとやま....笑。久々の現場行きまくりで改めて彼の凄さとかっこよさを痛感し栞さんのお話の凄さも久々に訪れて痛感し新しいお話が読めることが本当に嬉しいです。どのお話も心臓痛くて大大大好きです。愛重く愛しております。 (2022年8月17日 9時) (レス) id: 6b1f0a89b4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:siori | 作成日時:2021年11月6日 21時