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32.叶わない恋 ページ34








「俺と宙は……幼なじみでさ」




小さく息を吐いた後、そう呟くと先生は静かに話し始めた。
暗い眸だった。
初めて会ったあの頃に戻ってしまったみたいに。
不安と緊張からか、自分の表情がこわばっていくのが分かる。




「俺たちは家が近所で……小さい頃は公園で日が暮れるまで遊んだり、一緒に絵を描いて過ごしたりしていつも一緒にいたんだ。俺は宙のことがずっと好きだったから、高1の時にあいつに告って付き合い始めたんだけど……」




高1……私の知らない先生だ。
重苦しい空気が漂い、湧き上がる嫉妬と切なさに胸が握り潰されるように苦しい。




「どう言ったらいいのか……」




そう言い眉間に皺を寄せると、祈るように指をテーブルの上で絡め、肘を着いて自分の額に当てた。




「俺は……宙が欲しくてたまらなかった」
「……」
「だけど……待ってほしいって言われて、絶対に許してくれなかったんだよ」
「――……!」




どういうこと?




「……それでも俺は宙が好きだったから、許してくれるのを待ち続けた……。
何か事情があるんだろうと、大人になってからはあいつを理解しようと必死で、何年も何年も……精神的な繋がりだけだったけど……いつか……」




私への気遣いからか、先生は言葉を選ぶようにゆっくりと話し、顔を上げて私をじっと見つめた。




「いつか、その日が来るんじゃないかと……」




付き合っているのに身体の関係はなかったということだろうか?
北山先生が……?
とても信じられなかった。




「……」
「俺が絵を描けなくなったのは……お前の思っている通り。宙が関係しているんだけど……おい、大丈夫か?」
「え……」
「もうやめる?」




私の反応を見て先生が訊いてきた。
正直聞くのが怖い。
怖かったけれど、このままじゃ私は1歩も前に進めない。




「……大丈夫」
「いいのか?」
「うん」
「そんなある日、美弥から聞いたんだよ。宙が実の兄とできてるって」
「え……」
「宙からずっと、俺たちの関係を相談されていたって言ってた。歳が離れていたから一緒に遊んだことはなかったけど、兄ちゃんのことは昔から知ってたし、俺は信じらんなくて……悩んで悩んで……でも、他に好きな男がいるなら宙の行動も理解できるって思ったら……身体が動いてた。
何日も宙の後をつけて彼のマンションをやっと見つけたんだ」
「……」
「まるでストーカーだろ」




先生は、自嘲するように唇を曲げて笑った。







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設定タグ:北山宏光 , 玉森裕太 , Kis-My-Ft2   
作品ジャンル:恋愛
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siori(プロフ) - ゆうさん» ゆうさん、こんにちは!お待たせしてしまってごめんなさい。心がヒリヒリしながらも楽しんでいただけているのであれば、これほど嬉しいことはありません(T^T)今日、移行しますね!いつもコメントありがとうございます! (2022年9月9日 17時) (レス) id: 61df7685fa (このIDを非表示/違反報告)
ゆう(プロフ) - こんばんは!更新うれしいです。sioriさんの作品が大好きです。主人公ちゃんの北山先生への想いに涙でした。宙さん今は絵が描けていてよかったです。先生と主人公ちゃんも笑顔になってほしいなと思います。心が痛くなりながらもドキドキしながらいつも楽しみにしてます (2022年8月24日 22時) (レス) @page50 id: d56bd6cb16 (このIDを非表示/違反報告)
siori(プロフ) - ましろさん» ましろさん、え!?もうひと山ですか(笑)私の話なんて全然大したことなくて(笑)北山くんが凄いからですよー!彼の凄さは私も痛感してます!でも、私はましろさんが帰ってきてくれたことがなによりも嬉しいですっ(涙) (2022年8月18日 20時) (レス) @page16 id: 61df7685fa (このIDを非表示/違反報告)
siori(プロフ) - ★mmiioo★さん» ★mmiioo★さん、ありがとうございますっ、大きいんですけどね。相手が強すぎてどうなるかというところです(涙) (2022年8月18日 19時) (レス) @page16 id: 61df7685fa (このIDを非表示/違反報告)
ましろ(プロフ) - 次の章で終わるなんて言わずにあともうひとやま....笑。久々の現場行きまくりで改めて彼の凄さとかっこよさを痛感し栞さんのお話の凄さも久々に訪れて痛感し新しいお話が読めることが本当に嬉しいです。どのお話も心臓痛くて大大大好きです。愛重く愛しております。 (2022年8月17日 9時) (レス) id: 6b1f0a89b4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:siori | 作成日時:2021年11月6日 21時

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