カドミウムレッドの毒性3

4.さざなみ ページ4

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私は篠原先生みたいに色気もないし大人の女じゃないけれど、先生は私の彼氏だもん。
彼女に対するちっぽけな対抗心が芽生えた。




「可哀想ね、あなたも」
「――……！」




投げかけられた言葉に、思わず息を飲んでしまう。
憐憫の情を感じたからだ。




「……それ、どういう意味ですか？」
「辛い思いをするってこと」
「……」




何を言っているの？
私は篠原先生とは違うもの。
自分が北山先生と付き合えないからって、勝手に決めつけないでほしい。




「辛い思いなんてしてないです」
「そう？ならいいけど」




そう言い、彼女はじっと私を見つめた。




「絶対に愛してくれないわよ」




刹那、ドクッと心臓が跳ねた。
彼女は宙さんのことを何か知っているんだろうか？
そのことなら私だって北山先生から聞いている。

私は篠原先生とは違う！
ドッドッドッと鼓動がはやくなり、むくむくと喉の奥から怒りの感情が込み上げてきた。




「それ、宙さんのことを言っているんですよね？亡くなった人に適わないことくらい理解してます。でもそれでも私は先生が好きだから、……２人で乗り越えていきたいって思ってます！」




すると篠原先生は、口角を上げてフッと笑った。




「何が可笑しいんですか？」
「玉森さん、宏光と付き合ってるのに彼のこと何も知らないじゃない」
「え？」
「宏光のこと、何ひとつ理解してないんだなぁと思って」
「……」




まるで自分は北山先生のことを全て理解いるみたいな口振りだった。
またマウンティングされた気がする。




「な……何が言いたいんですか？」
「あなたは、どうあっても宙には適わないってこと」




ズバッと言い切られ涙が込み上げてきた。
何も言い返せない自分が悔しかった。
気づけばぎゅっと唇をかみ締めていて、口の中には鉄の味が広がる。




「……」
「今に分かると思うけどね、そんなに心配なら自分で宏光に訊いてみたら？さっきから疲れきった顔してるよ？ほら、もう不安になってる」
「えっ」




初めて心を見透かされた気がした。
思わず自分の頬に手を当てた時、ドアが開いて横尾先生と千賀先生が戻ってきた。
指で目尻を拭い、できる限り穏やかな表情を作って振り返った。




「千賀先生連れてきたよー」
「おおーっ！玉森さん！久しぶりだねぇ、元気してた？」




千賀先生の明るい笑顔に緊張の糸が切れ、ほっと肩の力が抜けたような感覚がした。






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