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3.懐かしい場所 ページ3








懐かしい道だった。
焦りや不安を抱えながら、この通りを毎日通った。


改札を出て暫く歩き、大通りから1本中に入ると、コンクリートの打ちっぱなしの古い建物が見えてきた。
壁面をびっしりと這う蔦は雨で艶を増し、建物を照らすスポットライトが瀟洒な雰囲気を醸し出している。
まさかここに、自分が講師として通う日が来るなんて感慨深い。
私は裏口に回り、中に入った。








「失礼します」




1階にある講師の休憩室。
ドアを開けると、中にいた横尾先生と篠原先生がこちらを向いた。
横尾先生と目が合うなり、メガネの奥の眸が優しく弧を描く。




「玉森さん、急なのにありがとね、助かったよ」
「いいえ、私もバイトを探していたので丁度良かったです。それにここは大学からも近いし」
「そう言ってもらえて安心したよ。大学が疎かにならないように無理なくお願いしますね」
「はい」
「えーと、千賀先生は授業中かな……今、呼んでくるからちょっと待っててね」
「はい」




横尾先生が千賀先生を呼びに行ってしまうと、休憩室は私と篠原先生だけになった。
視線を感じる。
かなり気まずかったけれど無視するわけにもいかずに、篠原先生に軽く頭を下げた。




「久しぶりね」
「そうですね」
「渉くんから聞いてびっくりしたわー。まさか玉森さんと一緒に働くことになるなんて、思ってもみなかったなぁ」




口角は上がっているけれど目は笑っていない。
歓迎されていないんだな……と、すぐに分かった。




「よろしくお願いします」
「よろしくね」




私と北山先生が付き合っていることを、彼女は知っているんだろうか?
北山先生と身体の関係があった人と、2人っきりで何を話したらいいのか分からない。
気まずい沈黙の中、横尾先生が戻ってくるのを待っていると篠原先生が口を開いた。




「ねえ」
「はい?」
「もしかして、宏光と付き合ってるつもり?」




単刀直入に訊かれ、思わず固まる。
つもり……って。
まるで私だけがそう思っているみたいな言い方だ。




「え……?」
「最近会ってくれないから、また別の女でも作ったのかと思ってたんだけど」




棘のある言い方だった。
子供だからって、バカにされている気がしてならない。




「……付き合ってます」
「え?」
「私たち、付き合ってるんですっ!」





真っ直ぐに篠原先生を見据えると、途端に彼女の顔色が変わった。




「本当に付き合ってるの?」
「はい」






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設定タグ:北山宏光 , 玉森裕太 , Kis-My-Ft2   
作品ジャンル:恋愛
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siori(プロフ) - ゆうさん» ゆうさん、こんにちは!お待たせしてしまってごめんなさい。心がヒリヒリしながらも楽しんでいただけているのであれば、これほど嬉しいことはありません(T^T)今日、移行しますね!いつもコメントありがとうございます! (2022年9月9日 17時) (レス) id: 61df7685fa (このIDを非表示/違反報告)
ゆう(プロフ) - こんばんは!更新うれしいです。sioriさんの作品が大好きです。主人公ちゃんの北山先生への想いに涙でした。宙さん今は絵が描けていてよかったです。先生と主人公ちゃんも笑顔になってほしいなと思います。心が痛くなりながらもドキドキしながらいつも楽しみにしてます (2022年8月24日 22時) (レス) @page50 id: d56bd6cb16 (このIDを非表示/違反報告)
siori(プロフ) - ましろさん» ましろさん、え!?もうひと山ですか(笑)私の話なんて全然大したことなくて(笑)北山くんが凄いからですよー!彼の凄さは私も痛感してます!でも、私はましろさんが帰ってきてくれたことがなによりも嬉しいですっ(涙) (2022年8月18日 20時) (レス) @page16 id: 61df7685fa (このIDを非表示/違反報告)
siori(プロフ) - ★mmiioo★さん» ★mmiioo★さん、ありがとうございますっ、大きいんですけどね。相手が強すぎてどうなるかというところです(涙) (2022年8月18日 19時) (レス) @page16 id: 61df7685fa (このIDを非表示/違反報告)
ましろ(プロフ) - 次の章で終わるなんて言わずにあともうひとやま....笑。久々の現場行きまくりで改めて彼の凄さとかっこよさを痛感し栞さんのお話の凄さも久々に訪れて痛感し新しいお話が読めることが本当に嬉しいです。どのお話も心臓痛くて大大大好きです。愛重く愛しております。 (2022年8月17日 9時) (レス) id: 6b1f0a89b4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:siori | 作成日時:2021年11月6日 21時

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