カドミウムレッドの毒性3

14.写真 ページ14

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淡い影のような曇を透かし、ぼんやりと白む空。
太陽は見えないのにどこか眩しい不思議な空だった。
北山先生の耳って、ハートを逆さまにしたような形をしているんだよね……可愛い。
それに銀髪が似合うなぁ。
柔らかい髪を梳く。



髪に触れても起きる気配がない。
先生にもっと触れたいの。ちょっとだけじっとしていてね。
指を顬から頬、そして唇に滑らせる。


先生の唇は柔らかくてぷっくりしてて気持ちいいんだ。
私は先生の唇をじっと見つめた。
少し開いた唇からは、白い前歯がほんの少しだけ見える。
私、いつもこの唇と……
先生とのキスを思い出し、胸がかぁっと熱くなる。
何考えてるの！ここは外だよ！
ぶんぶんと頭を横に振った。



先生……



私の前でこんなに穏やかな顔をして……
その無防備な寝顔を見ているうちに愛おしさが込み上げてくる。
今、この瞬間の先生を残しておきたいな。
１枚だけならいいよね？
そっとスマホを手に取りタップした。



カシャ




「こーら、勝手に撮るな」
「え？」
「盗撮だぞー」




スマホのシャッター音とともに先生が薄目を開けて私を見た。




「せんせ……起きてたの！？」
「うとうとしてた」
「ごめんなさい。でも私、一緒に写った写真だって１枚も持ってないんだよ」
「別に持ってなくていいだろ」
「やだ。欲しいよ……」
「俺、写真苦手」
「撮ってくれないなら、また寝てる時に撮るもん」
「お前、それはマジでやめろ」
「じゃあ一緒に撮ろう？」
「苦手って言ってんじゃん」
「大丈夫、私が撮るから！」
「そういうことじゃ、」




眩しそうな目をして上体を起こした先生に、ぎゅっとくっついて無理やりツーショットを撮った。




「あ！いま咄嗟に横向いたでしょ」
「知らんわ」
「もー！せっかく海に来たのにな……１枚もダメなんて悲しすぎる」
「……」
「ケチ……」
「わーかったよっ、いいよ」
「いいの！？」
「ああ」
「じゃあ、海をバックにしよーよ」




よいしょと腕を引っ張って、全く乗り気じゃない先生を立たせる。




「先生の方が腕が長いから撮って」
「はいはい」
「せんせ、笑ってね！」
「笑うのかよ」
「んもー！いいからっ、ほら、はいポーズ！」




カシャ



返されたスマホ。
そこには満面の笑みを浮かべた私と苦笑いしている先生が写っていた。ちょっと照れているようにも見える。
本当はもっとにこにこして欲しかったけれど、これ以上は望まない。
先生の精一杯だと思うから。





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