カドミウムレッドの毒性3

12.光芒 ページ12

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あれ？小降りになってきたかも……




「ねえ先生、雨が止みそう」




暗い雲に覆われていた空はいつの間にか淡い灰色に変わり、朝から降り続いていた雨は糸が切れたようにぷつりと止んだ。




「ほんとだ」
「晴れるといいなぁ」
「どうだろ」
「先生、雨も止んだしそろそろ海に行ってみない？」
「そうだね。どうする？海がある鎌倉駅は次の駅だけど、ひと駅くらい歩くか？」
「歩きたい！せっかく鎌倉に来てるんだもん。お散歩楽しいし」




お寺を後にして、私たちはゆっくりと海方面に歩き始めた。
隣を歩く先生の腕に自分のそれを絡める。




「紫陽花きれいだったなぁ、また来たい」
「来年また来よう」
「うん……」




来年の話をされるのは嬉しくてたまらない。
だって先生は、来年も私と一緒にいると思っているってことでしょう？
思わず頬が緩む。




「せんせ、約束だよ」
「ん？ああ、約束な」




先生はそう言ってから照れくさそうに微笑んだ。





北鎌倉から海に近い鎌倉駅までは、歩いて約４０分ほどらしい。
緩やかな坂道、瑞々しい木々の香り。
八幡宮前の交差点を通り過ぎ、賑やかな小町通りでは雑貨屋を見て歩いた。
この通りは人が多く、まるで鎌倉の原宿みたいだ。




「見て、人力車」
「京都と違って道が狭いから大変そうだな、坂も多いし」
「そうだよね」
「乗りたい？」
「え！？なんか……皆に見られるし恥ずかしいからいい」
「ふふ、いいの？」
「うん」




だってもの凄く高いし……
先生にお金を使わせたくない。



声かけをしている人力車のお兄さんを横目に見ながら若宮大路を歩いていると、大きな赤い鳥居が見えてきた。
微かに潮の香りが漂ってくる。




「もうすぐ海？」
「うん」
「私、雨が上がるかもと思って一応レジャーシート持ってきたの」
「マジ？でかした」
「でしょ！」
「用意いいじゃん。なぁ、腹減らない？」
「そういえばお腹空いたかも」
「何か食う？」
「あそこにハンバーガーショップがあるよ。海で食べない？」
「いいねぇ」




通り沿いにあるハワイアンスタイルのハンバーガー屋さんで、北山先生はアボカドバーガー、私はスパムバーガーを買った。



バス通りを抜けたところ、真正面に広がる海に思わず息を呑む。




「わぁ！海っ！ひろーい！」




雨上がりの空はまだどんよりとしていたけれど、沖の方ではいくつもの光芒が海にさし、鈍色の海面がほんのりと光っているのが見えた。







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