検索窓
今日:23 hit、昨日:3 hit、合計:90,605 hit

11.紫陽花 ページ11









私よりもずっと大人な先生は、私に対してこんな風にドキドキすることなんてあるんだろうか?
いつも余裕で、私ばかりが先生を好きで……



――って。ああ、また負の感情が湧いてきた。
もういい加減にやめたいのに、篠原先生の言葉が頭にこびりついて離れない。
会いたいって、私を好きって言ってくれた先生を信じたいのに。
それなのに……やっぱり不安になる。
くよくよと考えるのを止められない私は本当にどうしようもない……







バス通りを歩いているとお寺への案内板が見えてきた。
角を曲がり細い路地に入れば緩い坂道が続いている。
古戦場だった鎌倉は、切り通しや入り組んだ細い道が多いらしい。




「あそこかな」




緑豊かな道の先、見上げれば、真っ直ぐ伸びた階段の両側には、妍を競うかのように雨にしっとりと濡れた色とりどりの紫陽花が咲き零れ、茅葺きの山門へと続いていた。



雨で香る深緑の中、山門をくぐり先生と並んでゆっくりと歩く。
尼寺らしく質素でいながらも落ち着いた温かさが感じられるお寺だった。




「先生、風情のあるお寺だね。見て、あの苔むした門!」
「風情とか分かんの?」
「子供扱いしないで、そのくらい分かるよ」
「はいはい」




境内にある苔むした茅葺きの小さい門の向こうには茶室があるらしく、今ちょうど茶道が行われているのか、着物姿の上品な女性が数人入っていくのが見えた。




「茶道って、1度やってみたいなぁ」
「どうせ和菓子に興味あるんだろ」
「そんなことないもん」




くすりと笑う北山先生。
趣のある境内は、しっとり濡れる草木の生命力で溢れていて、心がすーっと浄化されていくようだった。
紫陽花が見頃を迎え、雨だったけれど自然美溢れる西慶寺はたくさんの人で賑わっていた。




「これ、菖蒲かな?アヤメかな?」
「俺、花はまったく分かんない」
「あ、菖蒲って書いてある。きれー」




数は多くないけれど、濃い紫色の菖蒲も見頃だ。




「ねぇ、先生はどの紫陽花が好き?」
「俺?あー、ブルーの」
「適当にブルーって言えばいいと思ってるでしょ」
「は?んなことないわ」
「私はガク紫陽花が好きだなぁ、紫のこの色。やっぱり絵の具ではこんな素敵な色は出せないもの」
「まあ、そうかもね」
「うん。自然って本当に凄い!」




楽しかった。
北山先生と一緒の傘に入って手を繋ぎ、たわいのない話をしながらぶらぶらと歩くだけで周りの景色がより輝いて見えるから不思議だった。





12.光芒→←10.白いスニーカー



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (405 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
871人がお気に入り
設定タグ:北山宏光 , 玉森裕太 , Kis-My-Ft2   
作品ジャンル:恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

siori(プロフ) - ゆうさん» ゆうさん、こんにちは!お待たせしてしまってごめんなさい。心がヒリヒリしながらも楽しんでいただけているのであれば、これほど嬉しいことはありません(T^T)今日、移行しますね!いつもコメントありがとうございます! (2022年9月9日 17時) (レス) id: 61df7685fa (このIDを非表示/違反報告)
ゆう(プロフ) - こんばんは!更新うれしいです。sioriさんの作品が大好きです。主人公ちゃんの北山先生への想いに涙でした。宙さん今は絵が描けていてよかったです。先生と主人公ちゃんも笑顔になってほしいなと思います。心が痛くなりながらもドキドキしながらいつも楽しみにしてます (2022年8月24日 22時) (レス) @page50 id: d56bd6cb16 (このIDを非表示/違反報告)
siori(プロフ) - ましろさん» ましろさん、え!?もうひと山ですか(笑)私の話なんて全然大したことなくて(笑)北山くんが凄いからですよー!彼の凄さは私も痛感してます!でも、私はましろさんが帰ってきてくれたことがなによりも嬉しいですっ(涙) (2022年8月18日 20時) (レス) @page16 id: 61df7685fa (このIDを非表示/違反報告)
siori(プロフ) - ★mmiioo★さん» ★mmiioo★さん、ありがとうございますっ、大きいんですけどね。相手が強すぎてどうなるかというところです(涙) (2022年8月18日 19時) (レス) @page16 id: 61df7685fa (このIDを非表示/違反報告)
ましろ(プロフ) - 次の章で終わるなんて言わずにあともうひとやま....笑。久々の現場行きまくりで改めて彼の凄さとかっこよさを痛感し栞さんのお話の凄さも久々に訪れて痛感し新しいお話が読めることが本当に嬉しいです。どのお話も心臓痛くて大大大好きです。愛重く愛しております。 (2022年8月17日 9時) (レス) id: 6b1f0a89b4 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:siori | 作成日時:2021年11月6日 21時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。