Palauan Blue

7.マーメイド1 ページ7

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「ヒロミツ、ドウダッタ？」
「凄かった……」




まさに「凄い」の一言だった。




「北山くんは持ってますねぇよ、丁度いい潮廻りに恵まれてラッキーでした」
「あー、それこの前も言われました。持ってるって」




興奮冷めやらずの清水さんや石井さんと、ギンガメアジの音やサメの話で盛り上がった。




「じゃあ、これから釣りでもしてこの辺の無人島でメシにしましょう」
「はい！」




休憩後の２本目は神秘の世界。
ブルーホールだ。





*





ブルーコーナーとブルーホールは隣同士のポイントである。
岬のブルーコーナーは流れがあることで有名だが、ブルーホールは岬の手前にあり、そして中は巨大なドーム状になっているので対照的に流れがない。


浅いリーフ下のぽっかり空いた穴から入り、ゆっくりと深度を下げていく。
俺たちが入ったような縦穴が４つ、横穴が２つ。合計６つの穴が、ドーム状の巨大な空間で繋がっていた。


４つの穴から降り注ぐ陽光が水に透けて、ドーム内は怖いほど鮮やかなブルーに染まっている。
俺たちの世界が地上にあるように、ここには青い世界があって、多種多様な生き物が生きている。


ゆっくりと深度を下げて仰向けになり、ぷかりと浮いて上を見れば。




朧月――……




水を透かしホールに差し込む陽光は、まるで月明かりのようだった。
青い光にドームの形がはっきりと分かり、幻想的な空間が浮かび上がる。
海の中なのに。
天空には朧月が浮かび、青い月光に照らされているように感じた。






その時だ。
月明かりの中に現れたのは――




人魚だった。




水に靡く長い髪。
しなやかな肢体。
柔らかくドルフィンキックをしながら俺の横をすり抜けて、ブルーホールの奥深くへ……


その光景があまりにも美しくて。
息を呑み、呼吸するのを忘れそうになる。


人魚は本当にいるんだ――……
この時、俺は本気でそう思った。
童話の人魚姫って、ラストはどうだったっけ。
確か……海の泡になって……消えた？
哀しい話だった記憶がある。


自分の吐く泡が、ゴポゴポとゆっくり上にあがっていき、光の中でキラキラと輝く。


彼女はパラワンブルーの中に溶け込んで、童話の人魚姫のように海の泡となり消えてしまうのではないかと思った。
俺はただ、呆然とブルーホールに浮かんだまま、レギュレーターから漏れる泡を見つめていた。









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