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「わぉ、すっげ……」
ドアを開けるなり、その開放的な空間に思わず溜息が漏れた。
水上コテージは快適で、天井が高く、テラスにはそのまま海に降りられる階段がある。
キングサイズのベッドと、テーブルの上にはフルーツが。
そしてソファの前のテーブルの下は、ガラス張りの床になっていた。
今日は流石に疲れたわ……
明日に備え、さっとシャワーを浴びてもう寝ようか。
そう思い、ぼふっとベッドにダイブした。
どのくらい経ったのか、気づけば寝落ちしていたらしい。
シャワーを浴び、冷蔵庫から冷えたビールを取り出しテラスに出ると、既に水平線は消え、海と空が溶け合う中に星が見え始めていた。
潮風が肌を撫でていく。
暗い海原には一条の銀の道がまっすぐ延び、まあるい月へとつながっていた。
大自然を前にして、趣味がこうして仕事に繋がるなんて、俺って恵まれているんだなぁとつくづく思う。
レギュラー番組もあってメンバーが欠けることもなく、俺たちも中堅と言われるようになってきた。
そろそろ次のステージに行きたい……
そんなことをぼんやりと考えていた時だ。
月の道で何かが跳ねた。
ん?何だあれ……でけぇ魚か?
思わず立ち上がり、手すりに両手をついて目を凝らせば、月明かりに照らされてそのシルエットがはっきりと見えた。
「イルカ……?」
それは何度も飛び跳ねながら、時に宙返りしてはまた海の中へと落ちていく。
間違いない、イルカだ!
そしてよく見ると、イルカと戯れるように何かが動いている。
えっ――……人間!?
すると次の瞬間、2つのシルエットは月の道を砕き、海の中へと消えていった。
それは一瞬のできごと。
目を擦り、もう一度月明かりの下を凝視したけれど、ただ暗い海原と月へつながる一条の道が延びているだけだった。
「マジかよ……」
こんな夜にイルカと人間が泳いでるって……
今のは幻だったのかもしれない。
やべーな、幻覚を見るほど疲れているのか?
明日は早いしもう寝よう。
俺は残ったビールを飲み干して、ベッドに横になると目を閉じた。
* * *
翌朝、アラームで目覚めた俺は少し早めに部屋を出た。
リゾート内にはヤシの木や、至る所に鮮やかなブーゲンビリアやプルメリアが咲き誇り、瑞々しい緑と南国特有の陽光が眩しい。
パラオは1年を通じて雲が多く、青い空には真っ白いわた雲が浮かんでいた。
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siori(プロフ) - にかみつばさん» にかみつばさん、ありがとうございます!そうなんですよね、特に今回のはどうしても書きたくなってしまって。もうダークな妄想が止まらないです(笑) (2021年6月3日 8時) (レス) id: 534cf1e415 (このIDを非表示/違反報告)
にかみつば(プロフ) - こんにちは(^-^)ふと浮かんだり、作品を見たり聞いたり読んだりして話が浮かんでスラスラ書けてしまうこととかありますよね!再開楽しみにしています☆ (2021年6月1日 18時) (レス) id: a0721de2a5 (このIDを非表示/違反報告)
siori(プロフ) - はるはるさん» はるはるさん、こんにちは!ほんとですね、コロナで海外旅行どころじゃなくなってしまいましたね。パラオで北山くんと過ごしたいなぁという願望だけしかない話で何も中身がなくて申し訳ないですが、きれいな海をココロに描いて下さったのなら嬉しいです! (2021年5月18日 19時) (レス) id: 534cf1e415 (このIDを非表示/違反報告)
はるはる(プロフ) - sioriさん、更新ありがとうございます。美しい海の情景が、詳しく表現されていて、私もその場にいるようです。未だ海外旅行は、行った事ないんですが、陽射しも暑く感じるほどです。この世界観、本当に有難いです。 (2021年5月16日 15時) (レス) id: 4f8e80d38c (このIDを非表示/違反報告)
siori(プロフ) - ななこさん» ななこさーん、こちらも読んでくださりありがとうございます!そうですよね、ほんと切ない話ばかりだと自分でも思っています。大好きと言って下さり嬉しいです!まずは北山くんとパラオの海を楽しんでくださいね! (2021年5月9日 20時) (レス) id: faedcbc792 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:siori | 作成日時:2021年5月2日 19時