15.朝焼け ページ15
・
「正直、どう接していいか分からないんですよ……そうか、あの子がね……迷惑かけて悪いけどよろしくお願いします」
「いえ、俺からお願いしたくらいなんで迷惑なんて思ってませんから。俺も彼女と一緒に潜ってみたいんです。得意なんすよ、潜るの」
「ははっ、北山くんは万能そうだもんね」
彼はそう言い、空を映し黄金色に染まる海をじっと見つめた。
何を思っているんだろうか?
その視線の先にあるものは何なんだろう?
と、ふと思う。
結局この日は遅くまで話は尽きなくて、お世話になったスタッフを交え、酒を酌み交わしながらパラオの夜は更けていった。
* * *
“キィー”
次の日の朝、イルカのような鳴き声で目覚める。
ん?イルカ……?
今何時なんだ?
眠い目を擦りながらテラスに出てみると、空は茜色の朝焼けに染まっている。
めっちゃ綺麗だな……
すると海面に大きな背鰭が見えた。
それはゆっくり近づいてくると、ひょっこりイルカが顔を出した。
「お前……ピピか?」
“キィー”
「北山さん」
「うわっ!」
思わず大きい声が出たのは、いきなり声をかけられたからだ。
声のした方を見れば、海へ降りるテラスの階段にAちゃんが腰掛けていた。
「おはよう、北山さん」
「え!?Aちゃん、何でここが俺のコテージって分かったの?」
「ピピが教えてくれたから」
「ピピが?ってか、もし違ったらどーすんだよ、勝手にこういうことすんのはヤバいから」
「ごめんなさい」
相変わらずにこりともしないが、言い合いしても仕方がないと思ったのか彼女は素直に謝った。
それにしてもなんつー早起き……
「今日学校は?」
「私、もう全部単位取ってるから行かなくても大丈夫なの」
「行かなくても大丈夫って?」
「卒業できるってこと」
「お母さんには?休むって言ったのか?」
「言ったよ」
はい。言ってないっすよね。
「嘘つくな」
「……言ったから」
「ほんと?」
「いっ……言ってないけどっ、……本当に大丈夫だから!」
「わーかったよ、でも今度からは休むなよ。俺は休んでまで案内して欲しいなんて思ってないから」
「……分かった」
「なぁ、腹減らない?」
「ううん、お腹空いてない」
「メシ食ってきたの?」
「うん……」
ギュルルル……
「あ……」
「ふふ、なんだよ空いてんじゃん」
そうは言ったけれど、彼女のお腹が大きく鳴って、思わずくすりと笑ってしまった。
・
463人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「Kis-My-Ft2」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
siori(プロフ) - にかみつばさん» にかみつばさん、ありがとうございます!そうなんですよね、特に今回のはどうしても書きたくなってしまって。もうダークな妄想が止まらないです(笑) (2021年6月3日 8時) (レス) id: 534cf1e415 (このIDを非表示/違反報告)
にかみつば(プロフ) - こんにちは(^-^)ふと浮かんだり、作品を見たり聞いたり読んだりして話が浮かんでスラスラ書けてしまうこととかありますよね!再開楽しみにしています☆ (2021年6月1日 18時) (レス) id: a0721de2a5 (このIDを非表示/違反報告)
siori(プロフ) - はるはるさん» はるはるさん、こんにちは!ほんとですね、コロナで海外旅行どころじゃなくなってしまいましたね。パラオで北山くんと過ごしたいなぁという願望だけしかない話で何も中身がなくて申し訳ないですが、きれいな海をココロに描いて下さったのなら嬉しいです! (2021年5月18日 19時) (レス) id: 534cf1e415 (このIDを非表示/違反報告)
はるはる(プロフ) - sioriさん、更新ありがとうございます。美しい海の情景が、詳しく表現されていて、私もその場にいるようです。未だ海外旅行は、行った事ないんですが、陽射しも暑く感じるほどです。この世界観、本当に有難いです。 (2021年5月16日 15時) (レス) id: 4f8e80d38c (このIDを非表示/違反報告)
siori(プロフ) - ななこさん» ななこさーん、こちらも読んでくださりありがとうございます!そうですよね、ほんと切ない話ばかりだと自分でも思っています。大好きと言って下さり嬉しいです!まずは北山くんとパラオの海を楽しんでくださいね! (2021年5月9日 20時) (レス) id: faedcbc792 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:siori | 作成日時:2021年5月2日 19時