Palauan Blue

12.海の音 ページ12

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純粋に、彼女の潜水能力には興味があった。
気になっていることを訊きたいとも思ったけれど、父親の事故のことを知った今、正直プライベートなことを訊くのをためらってしまう。




「東京にも野生のイルカに会える場所あんだよ。伊豆諸島とかね」
「東京……都会のイメージしかないけど」
「ははっ、だよな。綺麗な海や長閑な所もたくさんあるんだぜ」
「ふーん、そう……」
「Aちゃんはすげー深く潜れんだね、今日は流石に驚いたわ。俺にも潜り方教えてよ」
「うーん……」
「俺、結構スキンダイビング得意なんだよね」
「ふーん」




以前、某番組で海人さんに褒められたこともあったっけ。




「イルカとも泳いでみたいと思ってんだよね」
「そー」
「……」




さっきからの適当な相槌に、俺に全く興味がないんだな、と苦笑いする。




「でもほんとすげーな、エアなくて怖くないの？」
「怖くないよ、海は私の身体だから」
「海が身体ねぇ……」
「うん」




一体感があると言いたいんだろうか？
何だかものすごくスピリチュアルな事を言っている気がするけれど……
俺には全く理解できない。




「ちょっと、俺にはよく分かんねー世界だな……どんくらいの深さまで潜れんの？」
「フィン付ければかなり潜れると思う」
「特別なトレーニングとかしてたり？」
「うん……お父さんと一緒に……ずっとトレーニングしていたから」
「そうなんだ」
「……」




そう言うなりAちゃんは黙り込んでしまった。
くそーっ、めちゃくちゃ気まずいじゃねーか。
話を逸らそう。




「あ、あの……、あ、そだ、Aちゃんは何でここにいんの？」
「私のお母さんがこのホテルで働いているから待ってるの」
「そうなんだ」
「うん」
「そういえば、さっき学校って言ってたけど、今いくつ？」
「１8」
「高校生？」
「そう、もうすぐ卒業式」




若いとは思ったけれど、俺より一回りも若かったのか。
そう言い海を見つめた横顔はどこか大人びて。やっぱりとても寂しそうに見えた。


まるで誘っているかのように、桟橋の近くを泳いでは顔を出し俺たちを見てくるピピ。




“キィー”

「ピピごめんね、遊べないよ。北山さん、私もう行かないと」
「あー、ごめん」
「じゃあバイバイ」
「あ、待って！」




咄嗟に、行こうとする彼女の後ろ姿に声をかけていた。




「あのさ、俺にパラオの海のこと、教えてくんない？」







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