罪で結ぶ絆 5【最終章】

JUJU ページ37

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「え？仕事……ですか？」

「いや、求人広告見てたから探している
んじゃないかなぁって」

「あ……はい……」

「あ、急にごめんなさい。俺、この街で
ドッグサロンやってるんですけど、うち
のヤツが今妊婦で、悪阻が酷くて働けな
くなっちゃって。その……良かったらう
ちで働いてくれないかなぁと思って」

「私がですか？」

「はい。犬は好きですか？」


急に訊かれ、降って沸いたような話に戸
惑ってしまう。……犬は好きだ。ひろと
二人で暮らしたら、飼いたいねって話し
た事もあったっけ。


「……好きです」


そう言うと、その人は少し笑った。黒縁
メガネの奥から覗く眸が優しい。



「良かった！えーと、うちはペットホテ
ルもやっているんで、犬の散歩やその他
諸々の雑用なんかをやってもらうことに
なるけど……大丈夫ですか？」

「はい、でも……私なんかでいいんです
か？」

「あなたがいいんです」

「え……」

「こいつは、スタンプーのカレイとヒラ
メ、親子なんだ。そしてこいつがパグの
アジ」


カレイとヒラメとアジ？
意外な名前に思わずぷっと噴き出してし
まった。



「お魚ばっかり」

「でもいい名前でしょ」

「ふふ、この辺にぴったりですね……よ
ろしくお願いします」

「よし、決まりね！」


その人は、大きい口でにっと笑うと、私
に向かって骨ばった手を差し出した。差
し出されたその手をそっと握る。

あったかい……







「俺は横尾渉。よろしくね」



人の良さそうな笑顔が、夕陽でオレンジ
に染まっていた。

面白い人だな……

不思議な事に彼の笑顔を見ていたら、私
の沈んでいた気持ちが少し軽くなったか
のようだった。





*





翌日、教えてもらった住所を地図アプリ
に入れて家を出た。

この辺りは鵠沼の閑静な住宅街となって
いて、十五分ほど歩くと海に出る。私は
緑豊かな住宅街の一角にある古い平屋の
前で立ち止まった。



「え……と、ここ？」



門の横には犬の肉球が描かれたデザイン
のお洒落な看板が掛かっている。


“Trimmingsaron，PetHotel―JUJU”


「ジュジュ……やっぱりここだ」



男性の背丈ほどある竹垣の塀に囲まれて
る為、中を覗く事は出来ないが、どう見
てもペットサロンには見えない。

戸惑いつつもインターフォンを押すと、
横尾さんと、スタンプーのヒラメが尻尾
をプリプリ振りながら迎えてくれた。



「あっ、こんにちは」

「こんにちは、どうぞ入って」

「はい」






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