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夕暮れの出会い ページ36









「私にも、ひろしかいないんだよ……」



波の穏やかな夜だった、しんと静まり返
った部屋には自分の啜り泣く声だけが聞
こえる。



「ひろ……ひろ……ひろ、ひろ、ひろっ」



愛しい彼の名前を何度も口にした。
ひろを信じてはいたけれどやっぱりどこ
か不安で、ひろが恋しくて恋しくて……

私は、自分の身体を抱き締めるようにし
て眠った。





* * *





それから一週間が過ぎた。

何もする気にはなれなかったけれど、こ
の街の持つ独特な明るさや輝きが私をど
うにか支えてくれていた。

ひろの事ばかり考える毎日。買い物に行
く以外は家に篭って泣いてばかりいた。





誰か助けてっ……

私は今までの着信記録を見つめた。
裕太に電話してみようかとも思ったけれ
ど、したところで裕太は何も知らないと
分かっていた。

スマホを持っていないひろは、彼の電話
番号も知らないだろうし、過去を捨てた
と言っていたのに連絡なんてするはずも
ない。

それに、裕太に言ったところで余計な心
配をかけるだけだと思った。

あれからどうしているのか裕太の事が心
配ではあったけれど、自分達から去った
のに、どの面下げて会えるというのか。
都合良く頼るなんてできるわけがなかっ
た。




このままでは自分が駄目になる。

再び笑顔でひろに会えるその日まで、私
は生きていかなければならないんだから。








とにかく気を紛らわす為に、私は仕事を
探すことにした。ここでの生活は唯一の
癒しだったから、できればこの街で働き
たかった。

そんなある日の夕方、久しぶりに海に向
かって商店街を歩き、カフェに貼ってあ
る求人のチラシを見ていると、いきなり
後ろから何か大きい物に飛びつかれた。



「キャッ」

思わず声が出る。


「おいっ、ダメだって!すみませんっ!
大丈夫ですか?」


驚いて後ろを振り返ると、白い大きなス
タンダードプードルを二匹、黒いパグを
一匹連れた長身の男の人が申し訳なさそ
うに私を見ていた。


「あの」

「ごめんなさい!」

「あ……いえ、大丈夫です。ちょっとび
っくりしただけですから」

「こいつ身体ばかりデカいけどまだ子供
なんで、多分遊びたくてつい飛びついち
ゃったんだと思うんです」




「可愛い……」


その子は短い尻尾をぷりぷりと振り、賢
そうな眸で私を見てくる。


「あの……」

「はい?」



「もしかして、仕事探してます?」


その男性は、私と貼り紙を交互に見ると
そう言った。






JUJU→←残り香に……



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設定タグ:北山宏光 , 玉森裕太 , Kis-My-Ft2   
作品ジャンル:恋愛
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siori(プロフ) - はーちゃんさん» はーちゃんさぁん、お久しぶりです!途中で更新停止してしまいましたが、どうにかラストをむかえることが出来ました。はーちゃんさんのように待っていて下さった読者さまには本当に頭が上がりません(涙)温かいお言葉とっても嬉しかったです!ありがとうございました! (2020年6月20日 14時) (レス) id: b69aae1f51 (このIDを非表示/違反報告)
はーちゃん(プロフ) - 次回作も楽しみに待ってます! (2020年6月18日 20時) (レス) id: 68687cd35c (このIDを非表示/違反報告)
はーちゃん(プロフ) - sioriさん、お久しぶりです!最終回までやっとみれました。最後までお疲れ様でした!簡単に言うと、ハッピーENDで良かった。ゆっくり休んでくださいね。 (2020年6月18日 20時) (レス) id: 68687cd35c (このIDを非表示/違反報告)
siori(プロフ) - ミーさん» ミーさぁん、お久しぶりです!本当に半年以上書いてなかったなんて時の過ぎるのはなんと早いのでしょうね。こんなに書かなかったは始めてなので感覚がちょっと変です(笑)また最近ダイバー読んだりして夏らしい話が書きたいななんて。コメントありがとうございました! (2020年5月27日 11時) (レス) id: f587e16f89 (このIDを非表示/違反報告)
siori(プロフ) - とーかさん» とーかさん、ありがとう!とーかさんが読んでくれてると思うとド緊張でしたよ!いつもながら(笑)そうなんです、お話の構成考えるのって楽しいけれど、その選択の連続ですよね。私もいつかとーかさんのように伏線を張り巡らせるような話が書けるようになりたいですっ! (2020年5月27日 11時) (レス) id: f587e16f89 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:siori | 作成日時:2019年5月18日 23時

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