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いつか…… ページ33










”ほら聞こえるよ”

”本当に?”

”ここ、耳を澄ませて……どう?”

”本当だっ、聞こえる!”





ブナの大木に耳をくっつけて、三人で笑
いあった懐かしい記憶。もう戻らない遠
い日々。

キュッ、キュッ、と時折聞こえてくる特
徴的な鳴き声に

“あれはアカゲラだよ、キツツキの仲間”


お父さん……


目を瞑ると深緑の中、高い木の上を指さ
して優しく微笑む父の姿が見えた。







「俺もよく覚えてるよ」

「うん……家族と一緒に暮らした最後の
場所だから、いつか行ってみたい……」



私が答えると、ひろは泣いているような
笑っているような表情になった。



「……いつか行こう」

「一緒にでしょ?一緒に行くよね?」



不安になり、更に力を込めて縋るように
ひろに抱きついた。



「当たり前じゃん、一緒に行こう」

「うん、約束だよ」

「約束な」


ぎゅっと抱きしめ返してくれる腕の中で
その温かい胸に顔を埋めた。



「裕太、どうしてるかなぁ……きっとま
だ警察になんて行ってないよね?だって
怪我だって治ってないんだし」

「大丈夫、行ってないよ」

「うん」






あの日、ひろがスマホを海に捨てた日、
私がどうしてもスマホを捨てられなかっ
たのは、死んだヒヨリの写真が入ってい
たからだ。

だからアドレス帳を削除した。過去の私
を知る人間から逃げ出したかった。関係
を断ち切る事によって新しい自分になれ
る気がしていた。

ひろと新しい人生を歩む為に。

その後かかってきた沢山の電話は、裕太
と詩乃ママからだと思った。急に姿を消
してしまった私達を、心配してくれてい
る彼らに申し訳ない気持ちが無かったわ
けではないけれど、今の私にとってそれ
はほんのちっぽけな事だった。

自分達の事しか考えたくなかった。

私とひろさえ幸せなら……
只それだけで良かったんだ。




そう……

私は弱く、酷く醜い人間なのです。







「A、もう寝よっか」

「や……」

「眠れない?」

「違うの、もっとこうしていたいってい
うか……あの……」

「俺もだよ」

「ひろ……」




「……俺達してばっかだね」



耳元で、んふふっと甘い笑い声がした。



「ばかっ……じゃあもういいっ」

「俺は四六時中いつだってAが欲し
いよ」




私の唇にそっと指が触れた。私を切なく
見つめながら指が柔らかく唇をなぞる。

優しいひろは私の気持ちを分かってくれ
て、いつも欲しい言葉をくれるんだ。








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設定タグ:北山宏光 , 玉森裕太 , Kis-My-Ft2   
作品ジャンル:恋愛
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siori(プロフ) - はーちゃんさん» はーちゃんさぁん、お久しぶりです!途中で更新停止してしまいましたが、どうにかラストをむかえることが出来ました。はーちゃんさんのように待っていて下さった読者さまには本当に頭が上がりません(涙)温かいお言葉とっても嬉しかったです!ありがとうございました! (2020年6月20日 14時) (レス) id: b69aae1f51 (このIDを非表示/違反報告)
はーちゃん(プロフ) - 次回作も楽しみに待ってます! (2020年6月18日 20時) (レス) id: 68687cd35c (このIDを非表示/違反報告)
はーちゃん(プロフ) - sioriさん、お久しぶりです!最終回までやっとみれました。最後までお疲れ様でした!簡単に言うと、ハッピーENDで良かった。ゆっくり休んでくださいね。 (2020年6月18日 20時) (レス) id: 68687cd35c (このIDを非表示/違反報告)
siori(プロフ) - ミーさん» ミーさぁん、お久しぶりです!本当に半年以上書いてなかったなんて時の過ぎるのはなんと早いのでしょうね。こんなに書かなかったは始めてなので感覚がちょっと変です(笑)また最近ダイバー読んだりして夏らしい話が書きたいななんて。コメントありがとうございました! (2020年5月27日 11時) (レス) id: f587e16f89 (このIDを非表示/違反報告)
siori(プロフ) - とーかさん» とーかさん、ありがとう!とーかさんが読んでくれてると思うとド緊張でしたよ!いつもながら(笑)そうなんです、お話の構成考えるのって楽しいけれど、その選択の連続ですよね。私もいつかとーかさんのように伏線を張り巡らせるような話が書けるようになりたいですっ! (2020年5月27日 11時) (レス) id: f587e16f89 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:siori | 作成日時:2019年5月18日 23時

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