検索窓
今日:4 hit、昨日:1 hit、合計:242,362 hit

オレンジの夕方 ページ29








「俺が戻ったの気づかないんだもんなぁ
疲れたでしょ?大丈夫か?」


そう言いながらふっと笑うと、持ってい
たミルクティのペットボトルを渡してく
れた。


「大丈夫だよ。ひろは?頭はもう大丈夫
なの?」

「俺はもう何ともないよ、軽い脳震盪だ
と思う」



良かった

不安で離れたくなくて、ひろに抱きつい
てしまう。私の髪を梳く柔らかい指の動
きにうっとりとしていると、院長先生が
待合室にやって来た。






「先生……」

「無事に終わったからもう大丈夫だよ」


私の顔が余程不安そうに見えたのか、院
長先生は開口一番にそう言った。


「良かった……」

「暫く痛みは続くと思うけど、若いから
すぐに良くなるよ」

「はい」

「退院は予定通り三日後で大丈夫だから
後の事は担当の看護師から聞いて下さい
ね」

「本当に……ありがとうございました」

「大した事がなくて良かったよ」


私とひろを交互に見ると、院長は目尻に
深い皺を寄せた。









その日、麻酔でウトウトしていた裕太の
意識がはっきりしたのは夕方になってか
らだった。




「玉、気分はどう?」

「うん、呼吸も楽になったよ。んー、ま
だ胸は痛いけど」


裕太はベッドを少し起こすと、大きい深
呼吸をひとつした。



「若いから直ぐに良くなるってさ」

「うん……ねぇ、ルキアの事、ニュース
でやってない?」

「チェックしたけどやってないね」

「そうなの?」

「ああ」



「……ねぇ……ミツ……」

「うん?」

「これからどうするの?」

「どうすっかなぁー……玉は?」

「俺は証拠書類を持って警察に行くよ。
警察の対応次第でマスコミに売ってやる」




「……そうか」

「うん。止めても無駄だから」



裕太はそう言うと、窓に目をやりオレン
ジに染まる空をじっと見つめた。



「玉は実家に帰んの?黒川さんに住所知
られてるんじゃない?」

「知られてないよ、家族に仕事バレたく
なかったから黒川さんに嘘ついた」

「実家どこだっけ?」

「練馬区。だけど……もう帰る気は無い
から」




「玉ちゃん、本当にそれでいいのかよ」

「うるさいなっ、説教するなって言った
でしょ!」



裕太はひろをキッと睨みつけた。




「ヒヨリはさ、玉が好きだったんだと思
うよ」

「え……?」



裕太の表情が驚きに変わる。



「黒川さんの事はもちろん好きだったん
だろうけどさ、いなくなる少し前から裕
太裕太って……、嬉しそうに玉のことば
っかり」








月の道→←不安



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (523 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
2099人がお気に入り
設定タグ:北山宏光 , 玉森裕太 , Kis-My-Ft2   
作品ジャンル:恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

siori(プロフ) - はーちゃんさん» はーちゃんさぁん、お久しぶりです!途中で更新停止してしまいましたが、どうにかラストをむかえることが出来ました。はーちゃんさんのように待っていて下さった読者さまには本当に頭が上がりません(涙)温かいお言葉とっても嬉しかったです!ありがとうございました! (2020年6月20日 14時) (レス) id: b69aae1f51 (このIDを非表示/違反報告)
はーちゃん(プロフ) - 次回作も楽しみに待ってます! (2020年6月18日 20時) (レス) id: 68687cd35c (このIDを非表示/違反報告)
はーちゃん(プロフ) - sioriさん、お久しぶりです!最終回までやっとみれました。最後までお疲れ様でした!簡単に言うと、ハッピーENDで良かった。ゆっくり休んでくださいね。 (2020年6月18日 20時) (レス) id: 68687cd35c (このIDを非表示/違反報告)
siori(プロフ) - ミーさん» ミーさぁん、お久しぶりです!本当に半年以上書いてなかったなんて時の過ぎるのはなんと早いのでしょうね。こんなに書かなかったは始めてなので感覚がちょっと変です(笑)また最近ダイバー読んだりして夏らしい話が書きたいななんて。コメントありがとうございました! (2020年5月27日 11時) (レス) id: f587e16f89 (このIDを非表示/違反報告)
siori(プロフ) - とーかさん» とーかさん、ありがとう!とーかさんが読んでくれてると思うとド緊張でしたよ!いつもながら(笑)そうなんです、お話の構成考えるのって楽しいけれど、その選択の連続ですよね。私もいつかとーかさんのように伏線を張り巡らせるような話が書けるようになりたいですっ! (2020年5月27日 11時) (レス) id: f587e16f89 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:siori | 作成日時:2019年5月18日 23時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。