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金庫の中 ページ21











『玉……』

『それ、顧客名簿と通帳……全部現金で
振り込まれているよ。偽名だと思う。こ
れは女子高生の念書だよ。こんなの何の
役にも立たないと思うけど、逃げられな
いようにこれで脅していたのかもね』

『金庫まで開けたのかよ』

『だって鍵が見つかっちゃったから』

『見つかっちゃったからってさ、おまえ
大胆すぎ』



ひろの呆れたような声が聞こえてきた。



『それとこれ……』

『ん?』

『まあ見てよ』

『これ……〇〇党の佐久間さんだろ……』




佐久間って……あの代議士の……?

それは写真だろうか?裕太から何かを見
せられたらしく、驚いたような声がした。



『顧客だったみたい、まだ沢山あるよ。
それも一緒に入っていたんだよ』

『黒川さん……脅すつもりだったとか?』

『分からないけど……そうかもしれない
――……ねえミツ』

『うん?』





『俺、黒川さんから全てを奪うから』




『玉ちゃん……』

『何?』




吐き捨てるような裕太の声。それは始め
て聞く低く冷たい声だった。



『相手は半グレと代議士だよ、そんな事
してどうなるか分かってんの?』

『分かってるよ』

『でも、』




『―――あいつから……』

『え?』



『あいつから、全てを奪って何が悪い!
――……っ、いてっ』




ドクン……


裕太の言葉に眩暈を覚えると同時に胸が
ぎゅっと苦しくなった。冬枯れの朝、水
溜まりに張った氷に触ったような冷たい
手で、心臓を握り潰されるような感覚が
した。


私がひろに放った言葉と一緒だったから。






今の裕太は、ヒヨリの復讐をする事だけ
に心が囚われていて、きっと周りが何も
見えていない。只、激情のままに暴走す
る心。

それはあの時の私と一緒……

相手は厄介な半グレ集団で、告発なんて
したらどんな報復が待っているか分から
ない。裕太は沢山の大切な物を失うので
はないだろうか?

ヒヨリの為に、裕太のこれからの人生が
虚無が支配する、長い時間を過ごす為だ
けに使われるのは耐え難い。

ひろ、説得して……
何をしても、もうヒヨリは戻らないの。

私は顬を押さえて壁に寄りかかった。









『何も悪くないよ』




少しして、静かで落ち着いたひろの声が
聞こえた。



『え……』

『何も悪くなんてないんだよ』

『ミツ』

『ほら、処置したばかりなんだから興奮
すんなって。痛いだろ』

『もう痛くない』

『嘘つけ』




ふふっと笑う、いつものひろの声だった。








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設定タグ:北山宏光 , 玉森裕太 , Kis-My-Ft2   
作品ジャンル:恋愛
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siori(プロフ) - はーちゃんさん» はーちゃんさぁん、お久しぶりです!途中で更新停止してしまいましたが、どうにかラストをむかえることが出来ました。はーちゃんさんのように待っていて下さった読者さまには本当に頭が上がりません(涙)温かいお言葉とっても嬉しかったです!ありがとうございました! (2020年6月20日 14時) (レス) id: b69aae1f51 (このIDを非表示/違反報告)
はーちゃん(プロフ) - 次回作も楽しみに待ってます! (2020年6月18日 20時) (レス) id: 68687cd35c (このIDを非表示/違反報告)
はーちゃん(プロフ) - sioriさん、お久しぶりです!最終回までやっとみれました。最後までお疲れ様でした!簡単に言うと、ハッピーENDで良かった。ゆっくり休んでくださいね。 (2020年6月18日 20時) (レス) id: 68687cd35c (このIDを非表示/違反報告)
siori(プロフ) - ミーさん» ミーさぁん、お久しぶりです!本当に半年以上書いてなかったなんて時の過ぎるのはなんと早いのでしょうね。こんなに書かなかったは始めてなので感覚がちょっと変です(笑)また最近ダイバー読んだりして夏らしい話が書きたいななんて。コメントありがとうございました! (2020年5月27日 11時) (レス) id: f587e16f89 (このIDを非表示/違反報告)
siori(プロフ) - とーかさん» とーかさん、ありがとう!とーかさんが読んでくれてると思うとド緊張でしたよ!いつもながら(笑)そうなんです、お話の構成考えるのって楽しいけれど、その選択の連続ですよね。私もいつかとーかさんのように伏線を張り巡らせるような話が書けるようになりたいですっ! (2020年5月27日 11時) (レス) id: f587e16f89 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:siori | 作成日時:2019年5月18日 23時

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