優しい風に ページ30
・
「Aさん」
「うん？」
「今日から俺もミツも店が三連休なんだ
よ。ほぼ休みなしだったから」
「え……」
ひろに会いに行けと言っているのだろう
か？裕太の表情からは何も読み取ること
が出来なかった。
私は……
知らなかったとはいえ、ヒヨリを捨てた
男と関係を持ってきたんだ。
それに関して言えば、思ったよりも気持
ちが落ち込むことは無く、こんな仕事を
していた長い月日の間に自分の身体も心
も汚れ切ってしまったんだと思った。
今は只、あんな姿を見せつけてしまった
ひろへの切ない気持ちと、黒川さんへの
憎しみだけが募っていた。
裕太は私の仕事を知っているのだろう。
今日は、私を探しにあの界隈に来ていた
のだと思った。
真っ直ぐに私を見つめてくる裕太の眸か
ら逃れたかった。汚れ切った過去の自分
まで見透かされそうで怖かったから。
「ひろに合わせる顔がないのっ」
「Aさん」
「うん……」
「二人に何があったのか分からないけど
ミツ……Aさんの事を今もきっと想
ってると思う。余計なお世話なのは分か
ってるけど、もう一度ちゃんと向き合っ
て。ね？」
「裕太……」
「Aさん、ミツが好きでしょ？」
「え？」
「顔に書いてあるよ、ミツに会いたいっ
て」
何も言えないまま裕太を見つめる。
優しげなその顔は、今日最初に会った時
よりも少し痩せたように見えた。そんな
事があるわけなんてないのに……
ヒヨリの事がそれほどショックだったの
だと思った。隠していた事が余計に彼を
苦しめていたのかもしれない。裕太への
申し訳ない気持ちで胸がいっぱいになる。
けれどその眸からは、怒りや動揺の色は
感じなくて……
それがとても気になったんだ。
「裕太……変な事考えてないよね？」
「変な事って？」
あの客に向かいナイフを向けた時の、狂
気に満ちた裕太が浮かぶ。
「あのっ、……ううん、何でもない」
「変なAさん」
そう言い、ふにゃんと笑った裕太。
それはいつもの笑顔だった。
「俺、そろそろ帰るわ」
「うん……私、ひろに会いに行ってくる」
「駅まで一緒に行こうか」
「うん」
「ふふ、凄い寝相だね子猫ちゃん」
いつの間にかお腹を上に向けて気持ち良
さそうに寝ている子猫。
「裕太、ヒヨリの事……隠してて本当に
ごめんなさい。私、ちゃんとひろと話す
から」
「うん、後悔しないように生きて……素
直にならなくちゃ」
「ありがとう」
・
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咲良(プロフ) - sioriさん» あら大事なとこで私誤字っちゃってる...(笑)悪人には見えないですけどね。過去がありそう。良い行いですかぁ。頑張って下さい？(他人事のような言い回しになっちゃった(( 黒川さんの過去を暴くとしたら次で本当に最終章か心配です(笑) (2019年5月19日 8時) (
レス) id: 29a9983703 (このIDを非表示/違反報告)
siori(プロフ) - 咲良さん» 咲良さん、コメ返遅れました(o^^o)苦手ですよね、どちらとも取れるように胡散臭い感じに書いてましたので。彼は悪人なのでしょうか？いつもありがとうございます！ら、来世までですかー(笑)来世でお会い出来るように、私、良い行いをしなくちゃですね(^_^;) (2019年5月19日 1時) (レス) id: 0deae2af6f (このIDを非表示/違反報告)
咲良(プロフ) - 苦手ですよー！笑。同意が...(( でも本当になんか思い浮かべちゃいます。笑 違うんですね笑 いえいえー！これからもいっぱいみますよ！！((なんなら来世までついtrきます！！(( (2019年5月13日 18時) (レス) id: 29a9983703 (このIDを非表示/違反報告)
siori(プロフ) - 咲良さん» 咲良さん、黒川さん苦手ですかー？笑。わ、私もです！藤ヶ谷くんとか、中居くんて！怒られるー(^_^;)いや、全く違いますので！オロオロ。いつも読んでくださりありがとうございます！ (2019年5月13日 18時) (レス) id: 0902951a47 (このIDを非表示/違反報告)
siori(プロフ) - はちみつさん» みゆちゃん、ついに裕太まで自己犠牲(爆)焦らしてるわけじゃないんだけど、丁度移行になっちゃったんですー！でもそうだよね、続きが確かに気になりますよね。よし、頑張って書かなくちゃ。いつもいつもダークでアングラな話を読んでくれてありがとう！(嬉) (2019年5月13日 18時) (レス) id: 0902951a47 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：siori
| 作成日時：2019年2月26日 16時
