罪で結ぶ絆 4

赤い夜空 ページ21

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交差点はビル火災の為に騒然としていた。

白い煙が交差点付近まで漂い、大通りは
渋滞している。

イラついている車のクラクションが鳴り
響き、赤色灯と渋滞している車のブレー
キランプで、私には道路が血のように赤
く染まって見えたんだ。

紅蓮の炎、火の粉、茜色に焦げた夜空。
全てが血の色……

ズキン……と、又こめかみが傷んだ。





事故じゃなかった。
あれは、殺人事件だったんだ……








子供の頃の、鮮烈すぎる火事の記憶。



"ごめんな……"



私を見つめふわりと笑った父の眸。


涙に濡れた強い眼差しが……
父の最期の顔と言葉が頭から離れない。


両親とはそれっきり。
余程酷い遺体だったんだろう、私達は両
親の亡骸に会わせてもらう事すら出来な
かったから。

あの人は、父以外の家族全員を殺害しよ
うとしたんだ。

―――でも何の為に？

そして“ごめんな……”の意味は？


考えてみても私には全く分からなかった。





今から、あれは殺人事件だったと警察に
話したら再捜査してくれるのだろうか？

心底疲れた……
今日は色々な事がありすぎて、私の心は
悲鳴を上げていた。




「大丈夫？顔色が悪いよ……」


隣をゆっくりと歩く裕太が、私の顔を覗
き込むようにして訊いてくる。


「ごめんなさい、ちょっと気分が悪くて」

「もしかして……火事の事を全部思い出
したの？」

「え……？それは……」

「俺、ミツみたいに包容力ないけどさ、
こうやって寄り添うくらいなら出来るか
ら」



裕太が、優しく私の肩を支えてくれた。



「ありがとう、裕太」

「後でゆっくり話そう。俺、玲さん……
じゃなかった、Aさんにどうしても
話したい事があるから」

「うん……」

「タクシーに乗る？でも、今日は火事で
大渋滞だなぁ」

「大丈夫よ、家まで電車ですぐだから」





あの手紙が見つかってから引っ越して、
今は六本木から程近い代々木に住んでい
た。

新宿から少し離れた代々木公園側は、緑
が多くとても住みやすい所だった。


電車を降りて新緑の香りを纏う柔らかな
夜風に当たりながら歩くと、少しだけ気
持ちが落ち着いてきた。




「Aさん、大丈夫？」

「うん、大丈夫だよ」

「そっか、俺は何だか緊張してきたよ。
ヒヨリ、どんな顔するだろ？」






「……うん」





ごめんね裕太、ごめんなさいっ……


私を見ては照れくさそうに笑う裕太が痛
々しくて、私は頷く事しか出来なかった。







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