罪で結ぶ絆 4

本当の私 ページ20

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「ここは危ないよ、どこか落ち着いて話
せる所に行かない？」

「私……裕太と話すことなんてないから」




本当の兄弟のような絆で繋がっている二
人だった。だからきっと、ひろの事を心
配して私を探していたんだろう。

優しい裕太に本当は冷たくなんてしたく
なかったけれど、今更話す事なんてない
……ひろの事だって気まずいだけだし。

もうやめてほしい。勝手なのは充分わか
っていたけれど、これ以上心をかき乱さ
れたくなかった。

誰も知らない場所に行きたい……私の
事を知っている人もいない土地に。私の
願いはたったそれだけなのに、どうして
放っておいてくれないの？








「俺はあるよ」



裕太のひたむきな眼差しが私を捉える。
口をぎゅっと結び、強い意志を感じる眸
だった。抗えない……と感じた。だから
目を逸らす事しかできなかった。



「さっきヒヨリって言ったよね？妹だっ
て。玲さんて、ヒヨリのお姉さん？」

「え……？」



思わず裕太を見上げる。

知らぬうちに言っていたのだろうか？
けれど驚いたのは、次に裕太が発した言
葉だった。






「Aさんでしょ？」





そう言い微笑んだ裕太の顔は、複雑な色
を纏っていた。

泣きそうな、でも嬉しそうな、それとも
違う困惑したような……？この時の彼の
表情を喜怒哀楽のどれかと訊かれてもき
っと答えられないと思う。





「どうして私の名前を……？」



声が微かに震えた。


「ミツから聞いたんだよ。……どうして
隠すような事していたの？」


一体どういう事だろう……
なぜひろが私の名前を知っていたの？
ヒヨリから聞いたんだろうか？

只呆然としていると、消防士と話してい
た詩乃ママが私の所にやって来た。


「爆発の原因が分からないから、この辺
一帯を封鎖するんだって。今日は営業出
来ないから玲ちゃんも帰ってね」

「わかりました」

「明日の事はまた連絡するわね」



詩乃ママは裕太に小さく頭を下げると、
一度店に戻らなくちゃと言い行ってしま
った。


裕太の視線が私に刺さる。



「裕太、うちに来る？」

「Aさんの家に？」

「子猫が待ってるの……」

「ヒヨリにも会える？」

「……ヒヨリに会いに来てくれるの？」

「え？……もちろん。あいつ元気？」

「あの子も裕太が会いに来てくれたら喜
ぶと思うよ」





真実を話す事が怖い。

けれどこうなった以上、ヒヨリの死をい
つまでも裕太に隠し通す事なんて……
私にはできなかった。

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