罪で結ぶ絆 4

炎の中に ページ19

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炎が天を茜色に焦がし、黒煙と火の粉が
轟々と渦を巻きながら夜空に上がってい
くのを、私は只、呆然と見つめていた。


家の焼け落ちる轟きに怯え私にしがみつ
くヒヨリ。炎に照らされた顔は煤で汚れ
火事の激しさを物語っているようだった。

徐々に大きくなる警鐘とサイレンの音。
回転する赤色灯が眩しくて、私は目を細
めた。




“おいっ！こんな所に子供がいるぞっ！”


そして消防士らしき人の声が聞こえたの
を最後に、私の意識は遠のいて行った。





目覚めた時、赤い炎とは対象的な白い天
井が目に飛び込んできた。

ここは？

消毒薬の匂いがして、腕を見ると点滴が
してある。

助かったんだ……









「誰かいますかーっ！？」




再び音が戻って来た時、消防隊員の大き
な声が聞こえてきた。

こめかみがズキンと傷み、軽い目眩を覚
える。


回転する赤色灯の光。
勢いよく放水しているポンプの音。
緊張の怒号。
サイレンの音……

色んな音が混ざりあった喧騒の中、目の
前に紅蓮の炎が見えた。

猛火は火の粉を撒き散らし、黒煙をあげ
ながら今にも建物を飲み込もうとしてい
た。





「まだ中に人がいるぞっ！」


入口から突入する消防士が見えた。梯子
車から炎に向かって勢いよく放水をして
いるせいか、付近は白い煙に包まれてい
る。






その時、炎の中に横たわる母と煙を吸っ
て苦しそうに咳き込む父の姿が見えた。
そして近づくあの男……


お父さんっ！お母さんっ！
助けなくちゃ……
助ける事以外は何も考えられなかった。








炎に吸い寄せられた時、力強い腕に背後
から押さえ込まれた。



「危ないっ！どこ行くんだよ！」

「いや！離してっ！お父さんとお母さん
がまだ中にいるのっ！」

「え……」

「それにヒヨリは？……妹はどこっ？」




「玲さん……」




「助けて！お願いです！」

「玲さんっ！しっかりしてっ！」



後ろを向かされ肩を強く揺すぶられて、
ハッと我に返ると、蒼白な裕太の顔が目
の前にあった。



「え……裕太………」

「玲さん、もう大丈夫だから」



私を見つめ、安心させるように背中をゆ
っくり撫でてくれた。



「ここは……」

「……ん？ここは東京」

「何で……ここに裕太がいるの？」



裕太の眸が哀しげに揺れる。



「俺、ここ数ヶ月さ、ずーっと玲さんの
こと探していたんだよ」

「……え？」




「ミツと別れたって聞いたから……」




またガラスの割れる音がした。







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