罪で結ぶ絆 3

戸惑い ki ページ9

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「そうなんですか……」

「まあ、造作を譲り受けるために金を払
うことになるけど、スケルトンよりも費
用を大幅に抑えられるしね、内装はセン
ス良くリフォームすればいいし」


黒川さんは、当然俺が引き受けると思っ
ているようだった。




「仕事内容は何ですか？」

「ああ、普通のバーだよ。ボーイズバー
みたいなものだから。客と寝るような部
屋もないよ」

「ここには玉がいるだろ？あいつも大分
しっかりしてきたし、ミツのお陰で下も
育ってきてるから銀座の方を任せたい」



銀座か……


昔の銀座は、それこそ高級クラブが沢山
あったが、今は半分くらいに減ってしま
ったと聞いた。

接待費も使いたい放題、得意先もてなし
て仲良くなって、昼の仕事をうまく運ば
せるっていうのがビジネスモデルだった
時代。

その恩恵を一番に受けてきたのが、銀座
の夜のクラブだと思う。






俺は、話で聞くしかその時代のことを知
らないけれど、かつての日本を引っ張っ
てきた大企業が軒並み残念なことになっ
てしまっている今、銀座の夜も寂しくな
ってしまったんだろうね。

そんな銀座だが、変わりつつはあるみた
いだ。古いスタイルのクラブは減ってい
て、キャバクラ系の店が増えてるらしい。

生き残るには変わっていかないといけな
いってことだ。




IT企業の若い成功者達は、六本木や新宿
に流れていっている。とはいえ、日本一
の歓楽街。年齢層も高いし、金を出す客
もまだまだいるだろう。



ゆくゆくは新たな客を獲得したいってわ
けか……


銀座には、かつての黒服上がりの叩き上
げが沢山いると聞く。だが一財産成して
も身を持ち崩す人間は後を絶たない……

そんな銀座で挑戦してみたい、と黒川さ
んが考えるのもわからないわけでもなか
った。






「廉を連れて行っていいから、従業員の
教育をやってくれないか？うちは、客層
の良さが売りだから。そのためには従業
員の質が問われるからね」

「ちょっと……考えさせてくれません？」




黒川さんは、俺が快く引き受けると思っ
ていたんだろう、少し驚いた顔をした後
「まあ、まだまだ先の話だから。心積り
だけしておいてよ」そう言い俺に笑顔を
向けた。

黒川さんの笑顔は怖い。

人の良さそうなその裏に、何を考えてい
るかわからない怖さを秘めていたが、人
を惹き付ける魅力も持っていた。



黒川さんを想うと胸が痛む。

彼女の為にも、この仕事を長く続けるつ
もりはなかったから。








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