罪で結ぶ絆 3

交錯する感情 Ki ページ5

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「苦しいんだって……」



彼女を前にして、情けなく掠れる声。

まるで救いを求めて縋るような声で、自
分の口からこんなにも情けない声が出る
なんて驚いていた。



「ひろのここ、凄くどきどきしてる」

「……玲さん」


今度は玲さんが俺の手を掴み、そっと自
分の心臓の上に当てた。




「ひろ……私も苦しいよ……私に何した
の……？」




この時の俺の感情をどう表せばいいのか？

玲さんに対する焦がれるような想い、愛
おしさ、戸惑い、後ろめたさ―――

普通なら、同時には湧いてこないような
感情がぐちゃぐちゃに入り交じり、泣き
たいのか、笑いたいのかさえわからなく
なってしまう。





“だから私がひろを守りたい。私は……
ひろの唯一無二の存在になりたい……”





玲さんが以前、俺にくれた言葉を思い出
した。

俺の仕事で、彼女が苦しむことを心配し
ていたけれど、自分もこんなにも苦しい
なんて思ってもみなかったよ。

たった一つの真実は、こんなになっちま
うほど俺は玲さんに溺れているっていう
ことだけ。

愛を知らなかった俺に、愛をくれた君は
俺の全てだ。









暫く抱きしめ合っていたけれど、ここは
寒い玄関で、玲さんが「くしゅん」と可
愛いくしゃみをした。




「ごめん、ここ寒いよな。部屋入ろう」

「ひろが抱きしめてくれるから、私は寒
くないよ？」

「旨そうな匂いする」

「ふふ、今日はポトフ作ったの。野菜不
足してるんじゃないかと思って。でも、
もう遅いから明日の朝温めて食べよう」




俺達は、手を繋いで部屋に入った。

いつも寒々としている部屋は暖かく、ポ
トフの良い匂いが漂っていて、窓際には
真っ赤なポインセチアが置いてある。

ゴールドのリボンがかかっているそれは
殺風景な部屋を華やかにしてくれていた。



「ポインセチア？」

「あ、勝手にごめんね、クリスマスらし
いなぁって思って欲しくなっちゃったの
ひろの部屋、何も無いんだもん」


そう言いながらくすりと笑う。




「いや、いいねこういうの。俺、クリス
マスに特別なことした記憶ないからさ」

「そうなんだ……」

「ああ。すげー昔にはあったかもしれな
いけど忘れたわ」

「私もなの」

「え？」

「私もクリスマスの思い出って、あんま
りないの」





玲さんは俺から目を逸らし、どこか遠く
を見るようなぼんやりとした目付きにな
った。







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