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あの時の光 ki ページ39









どのくらい座り込んでいたんだろう?




サァーっと音を立て、降り続いていた冷
たい雨は、いつの間にか小降りになって
いた。




「君、大丈夫?」


突然雨が止み、上から降る声に顔を上げ
れば、黒い傘を俺の上に差し出すスーツ
姿の、小太りの男が立っている。


「具合悪いの?」

「……ほっとけよ」

「こんな時間にびしょ濡れで何している
の?もう終電もないし、それじゃタクシ
ーにも乗れないよ?」

「……」

「ねえ……君、可愛いね。何があったの
か知らないけど、僕と一緒に来ない?ホ
テルで少し休んだ方がいいよ。風邪引く
といけないし」




ホテル?



「怖がらなくても大丈夫だよ」


返事をしないでいると、男はそう言い、
意味深な微笑を浮かべた。

回らない頭でぼんやりと男を見つめ返せ
ば、そいつがゴクリと唾を飲み込んだの
がわかった。

ああ……そうか。結局俺は、こういう目
でしか見られないってことなんだ。






「君、男は始めて?」


身体に力が入らない。俺がよろよろと立
ち上がると、愉悦の笑みを浮かべながら
俺を上から下まで舐めるように見つめて
くる。


何も考えたくない……
もう、どうでもよかった。


汚れ切っている俺は、こいつの慰みもの
になるのがお似合いなのかもしれない。
……と、ふと思う。

陽光の差す、明るい世界へ行こうと思っ
たのが間違いだったんだ。

彼女を幸せにしたいなんて、本気で考え
てさ、身の程知らずにも程がある。

もう一筋の光は消えてしまった……





惨めで、ちっぽけな高校生だったあの時
の俺。金が欲しくて仕方がなかったあの
頃……

何を躊躇うことがある?
昔に戻るだけだろ?

これからも、こうやって客を取って生き
ていきゃあいいじゃないか。
皮肉にも、俺は男にモテるらしい。





「いいけど……その代わり高いぜ?いい
の?」

「い、いいよっ、早く行こうっ」



男の上擦った声が耳元で聞こえ、臭い息
が顔にかかった。







暗い夜空を見あげれば、もう雨は止んで
いた。



玲さん……



黒川さんと交わっていた、彼女の表情が
忘れられない。



ぎゅっと目を瞑る。
雨の匂いが纏う空気を吸い込み、ポケッ
トの中に手を入れると何かに触れた。


「……っ」


それは、血の滲む様な努力をして手に入
れた“合格者証”の入った封筒だった。


足が止まる。
手は封筒を握りしめたままで……









叶わない朝 ki→←光のない夜空 ki



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設定タグ:北山宏光 , 玉森裕太 , Kis-My-Ft2   
作品ジャンル:恋愛
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裕太 - このみこ (2021年2月25日 9時) (レス) id: 25b3f023e7 (このIDを非表示/違反報告)
siori(プロフ) - にかみつばさん» にかみつばさん、こんにちは。こんなダークな話まで読んでくださり嬉しすぎます。これからミツの過去も分かってきますので楽しんでいただけると幸いです! (2020年6月28日 11時) (レス) id: 05c0397959 (このIDを非表示/違反報告)
にかみつば(プロフ) - こんばんは。こちらも読ませて頂いてます。別世界過ぎて主人公を自分に置き換えて読むのは難しいですが、玉ちゃんが好きだと思ってたので、黒川さんだとわかり、面白い展開にゾクゾクしてます。キスマイとか関係なく凄く楽しく小説を読ませてもらってます。 (2020年6月27日 22時) (レス) id: 74d56dba5b (このIDを非表示/違反報告)
siori(プロフ) - ミーさん» ミーさぁん(o^-^)ほんと、悲しい展開で……(T‐T)分かります、そこ!嫌な予感しかなかったですよね、わーん!ごめんなさいっ!そして迷いながらも読み続けてくださり嬉しいです。早く沼から出られるように更新していきますので、お付き合い下さると嬉しいです!(>_<。) (2019年2月24日 17時) (レス) id: 3e6044568e (このIDを非表示/違反報告)
siori(プロフ) - きたみなさん» きたみなさん、こんにちは(o^-^)このようなダークな話にも関わらず、そんな風に言ってくださってとても嬉しいです!これからも心情と情景の描写を丁寧に書いていきたいと思いますので、上手くはありませんが、楽しんで頂けるように頑張りますね!(´>///<`) (2019年2月24日 17時) (レス) id: 3e6044568e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:siori | 作成日時:2018年12月11日 12時

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