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背負う重荷 ki ページ34








黒川さんから、みかじめ料は断わるよう
に言われたが、銀座という場所柄もあり
少しの妥協は仕方がないとも言われてい
た。

できれば最低限の妥協にしたかった。

年に一度の門松などの購入なら、まだ考
えてもいいだろう。きっと高いが数万だ
と思うから。

毎月三万だと、年間三十六万……
どう考えても頷けない値段だった。



向こうも脅せば支払うだろうと、甘く見
て来たんだろうけれど、脅されたからと
いって承諾するつもりは毛頭なかった。


とはいえ、ヤクザを上手く転がしてなん
ぼの世界……。





「もしまた俺がいない時に来たら、直ぐ
に連絡して」

「わかりました」


突っぱねて全く話を聞かないことも出来
たが、辞めるまでに、廉のためにも地元
ヤクザとは、どうにか良好な関係を築い
ておきたかったから。








* * *





「ほら、もっと白菜食べて」

「食ってるって」

「キノコとお豆腐も!大根も人参も食べ
なくちゃだめだよ」


玲さんがさっきから、俺の皿に野菜をガ
ンガン入れてくる。

今日の夜食は水炊きで、目の前でグツグ
ツ音を立てている鍋の中では、骨付きの
鶏肉が柔らかく煮えていた。



「あーもうっ!肉をもっと食わせてよ」

「野菜食べたらいいよ」

「俺、さっきから野菜すげー食ってんだ
けど?」

「ふふ、そう?」

「そーだよ」



ゆらゆらと、立ち上る湯気の向こうに見
える玲さんの優しい笑顔。

彼女の笑顔を見ると、昨日のヤクザの一
件だって何でもない事のように思えるか
ら不思議だった。

不安に押し潰されそうな時であっても、
なぜか大丈夫だって思える。

自分の背負う途轍もなく大きなものを、
一瞬にして忘れることができるんだよ。




「玲さん、ありがとう」



「…………どうしたの?急に……」


一瞬俺を見つめたその眸は、憂いを秘め
て揺れているように見えた。


「急に言いたくなっちゃった」



「変なひろ」


不意に出た言葉に、微かに唇を震わせた
玲さんは、僅かな動揺を見せた後、鶏肉
を俺の皿に入れてくれた。








窓越しに月明かりが差し込む寝室。ベッ
ドの中で今日も彼女は丸くなっていた。

試験勉強が終わり、いつものように彼女
の隣に滑り込めば、ぐすりと鼻を啜る音
がする。



えっ……泣いてるのか?



「玲さん……こっち向いて」

「いや……」

「いやなの?どうした?俺に言ってみ?」

「……何でもないの」




俺に背を向けた細い肩が、微かに震えて
いた。







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設定タグ:北山宏光 , 玉森裕太 , Kis-My-Ft2   
作品ジャンル:恋愛
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裕太 - このみこ (2021年2月25日 9時) (レス) id: 25b3f023e7 (このIDを非表示/違反報告)
siori(プロフ) - にかみつばさん» にかみつばさん、こんにちは。こんなダークな話まで読んでくださり嬉しすぎます。これからミツの過去も分かってきますので楽しんでいただけると幸いです! (2020年6月28日 11時) (レス) id: 05c0397959 (このIDを非表示/違反報告)
にかみつば(プロフ) - こんばんは。こちらも読ませて頂いてます。別世界過ぎて主人公を自分に置き換えて読むのは難しいですが、玉ちゃんが好きだと思ってたので、黒川さんだとわかり、面白い展開にゾクゾクしてます。キスマイとか関係なく凄く楽しく小説を読ませてもらってます。 (2020年6月27日 22時) (レス) id: 74d56dba5b (このIDを非表示/違反報告)
siori(プロフ) - ミーさん» ミーさぁん(o^-^)ほんと、悲しい展開で……(T‐T)分かります、そこ!嫌な予感しかなかったですよね、わーん!ごめんなさいっ!そして迷いながらも読み続けてくださり嬉しいです。早く沼から出られるように更新していきますので、お付き合い下さると嬉しいです!(>_<。) (2019年2月24日 17時) (レス) id: 3e6044568e (このIDを非表示/違反報告)
siori(プロフ) - きたみなさん» きたみなさん、こんにちは(o^-^)このようなダークな話にも関わらず、そんな風に言ってくださってとても嬉しいです!これからも心情と情景の描写を丁寧に書いていきたいと思いますので、上手くはありませんが、楽しんで頂けるように頑張りますね!(´>///<`) (2019年2月24日 17時) (レス) id: 3e6044568e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:siori | 作成日時:2018年12月11日 12時

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