罪で結ぶ絆 3

海月 ki ページ3

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「宏光、私といる時間は、あなたは私の
ものなの。他の女のことを考えたら許さ
ないわよ」


首筋に唇が近づき、チリっと痛みが走っ
た。









「くっそ……」


キスマークつけられた……

洗面所の鏡に映った自分の首筋には、く
っきりとした内出血の痕がついている。

仕事とはいうものの、こういう物を玲さ
んに見せたくはない……

俺の仕事も事情も、理解してくれている
から尚更だったのに。玲さんの優しい笑
顔が浮かび、とてつもない罪悪感に駆ら
れた。






「宏光、乾杯しよう」


シャンパングラスを軽く上げ、彼女は片
方の口角を上げた。

愛のない行為はなんて虚しいんだろう。
この人は俺との時間を過ごし、明日には
寒々とした部屋に帰るのか……

いくら金を持っていても、欲しいものが
何でも手に入っても、身体を重ねても、
何をしてもこの人が満足できるとは思え
なかった。

本当に手に入れたいものはここにはない
から。

今の俺にはわかる。本気で好きな女がで
きて、始めて客の哀しみを理解できた。




そろそろ潮時なのかもしれないな……




けれど、黒川さんにはでかい借りがあっ
た。

彼を善良な人間とは思っていなかったが
恩を感じていた。右腕となり従業員を教
育し、いずれはもっと事業をでかくする
手助けをして欲しいと言われていた。

俺に出来ることなんて……

せいぜい女と寝ることくらいで、彼は俺
を買い被りすぎていると思う。

今はまだ、辞めたいなんてとても言えな
かった。






*






日付が変わった頃、シャワーを浴びて、
俺はホテルを後にした。



ポケットの中には、南青山のセレクトシ
ョップで買ったピアス。掌で包むように
小さい箱の感触を確かめた。

廉に教えてもらったその店のジュエリー
は、自然界の物がモチーフで、透明感が
あり玲さんにぴったりだ。

彼女の華奢な白い指には、ロータスの葉
が重なりあうようなデザインの、プラチ
ナの指輪がきっと似合うと思ったけれど

いきなり高価な指輪は重いと思い、海月
をイメージさせる、透明な天然石とシル
バーのピアスを選んだ。


自然の美しさに魅せられた鎌倉在住の若
いデザイナーが、一つ一つ丁寧に手作り
した美しいピアスは、動く度にユラユラ
と揺れる。それは本当に、水中にたゆた
う海月のようだった。

玲さんには、ゴールドよりも冷たい月の
ようなプラチナが似合うと思う。




早く会いたい……

空に浮かぶ月を仰ぎ、俺は足を早めた。







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