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不安 ki ページ18









そして土曜日の今日も黒川さんは店に来
ていた。さっきまではいたけれど、姿が
見えないから二階の事務所にでもいった
のかもしれない。








「こんばんは」


午後八時過ぎ、愛しい声とともに玲さん
が店にやって来て、俺と目が合うなり花
のように笑った。


「今日は寒いね」

「玲さんいらっしゃい!」


カウンターに座った彼女に廉が笑顔で話
しかけている。黒川さんのことを色々言
っているけれど、廉だって玲さんを気に
入っているんだろ?


他の女性客とは違い、男に媚びず綺麗で
物腰も柔らかい玲さんは、うちの従業員
からも人気があった。

それに、言葉では上手く言い表せないけ
れど、彼女にはどこか人を惹きつけるよ
うな魅力があるのだと思う。

それは何なのか?彼女を言葉で表すのは
難しい。もっと本能で感じる何かだった
から。

彼女の魅力に、誰も気づかなければいい
のに……と、思う。

廉から黒川さんのことを聞かされたせい
か、胃がぎゅーっと押し上げられるよう
な感覚がした。







心地良いダウンライトだけの薄暗さの中
ジャズか流れ、シェーカーを振る音や、
グラスの触れ合う音が聞こえる。


週末の店内は、品の良い夜の香りに満ち
ていて、上客達はその雰囲気を解かない
ようにそっと小声で話し合っていた。









「ミツ、急で悪いけどこれから石井様の
指名入ったから。みえたら下降りて」


ふわりとシトラスの香りがして、いつの
間にか店に降りて来ていた黒川さんに耳
打ちされた。



「わかりました……」



石井さんか……

彼女はずっと俺の太客で、以前玲さんを
ボーイズクラブに紹介した客だ。キツイ
香水の香りとハスキーな声を思い出し、
途端に憂鬱になる。






玲さんをちらりと見ると、カウンターの
中の玉と話していた。


その時、黒川さんの視線が玲さんを捉え
たのがわかった。ゆっくりと彼女に近づ
き、その隣にどかりと腰を下ろした。

黒川さんが店に来ると、常連の客と長い
間談笑することはあっても、こうやって
席に着くことは今まで見たことがない。


時々玲さんの肩に触れたりしながら、白
い歯を覗かせている。冗談を言っている
のか、それに反応して可笑しそうに笑う
玲さん。

そんな黒川さんの眸を見た時、廉が言っ
ていたことはきっと当たっていると感じ
た。


彼がもし本気になったら……


わけのわからない不安に駆られそうにな
った時



「ミツ」


玉に話しかけられ、ハッと我に返った。






恋に耐え ki→←早春 ki



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設定タグ:北山宏光 , 玉森裕太 , Kis-My-Ft2   
作品ジャンル:恋愛
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裕太 - このみこ (2021年2月25日 9時) (レス) id: 25b3f023e7 (このIDを非表示/違反報告)
siori(プロフ) - にかみつばさん» にかみつばさん、こんにちは。こんなダークな話まで読んでくださり嬉しすぎます。これからミツの過去も分かってきますので楽しんでいただけると幸いです! (2020年6月28日 11時) (レス) id: 05c0397959 (このIDを非表示/違反報告)
にかみつば(プロフ) - こんばんは。こちらも読ませて頂いてます。別世界過ぎて主人公を自分に置き換えて読むのは難しいですが、玉ちゃんが好きだと思ってたので、黒川さんだとわかり、面白い展開にゾクゾクしてます。キスマイとか関係なく凄く楽しく小説を読ませてもらってます。 (2020年6月27日 22時) (レス) id: 74d56dba5b (このIDを非表示/違反報告)
siori(プロフ) - ミーさん» ミーさぁん(o^-^)ほんと、悲しい展開で……(T‐T)分かります、そこ!嫌な予感しかなかったですよね、わーん!ごめんなさいっ!そして迷いながらも読み続けてくださり嬉しいです。早く沼から出られるように更新していきますので、お付き合い下さると嬉しいです!(>_<。) (2019年2月24日 17時) (レス) id: 3e6044568e (このIDを非表示/違反報告)
siori(プロフ) - きたみなさん» きたみなさん、こんにちは(o^-^)このようなダークな話にも関わらず、そんな風に言ってくださってとても嬉しいです!これからも心情と情景の描写を丁寧に書いていきたいと思いますので、上手くはありませんが、楽しんで頂けるように頑張りますね!(´>///<`) (2019年2月24日 17時) (レス) id: 3e6044568e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:siori | 作成日時:2018年12月11日 12時

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