検索窓
今日:22 hit、昨日:0 hit、合計:259,579 hit

イブの夜に ki ページ2










「仕事が終わったら、ダッシュで帰るよ」

「うん」



仕事と聞いて、何を想像しているのか?
健気にも微笑んだ顔は、まるでガラス細
工のように脆くて……唇が微かに震えて
いた。

そんな彼女の、ひとつひとつの仕草が愛
おしい。彼女を抱き寄せ、髪に唇をつけ
た。


「玲さん……ごめんね……」

「うん……」

「ほら、手が凍えてる」

「ひろの手は温かいね」



玲さんの手をぎゅっと握り、アウターの
ポケットにそっと入れた。ぎゅっと手を
握り返してくるから、その小さな手の温
もりにほっとして、ポケットの中で指を
絡めた。









玉から、玲さんがホステスではないかと
知らされてから俺はずっと考えていた。

玲さんと会うのはいつも週末で、平日の
夜は残業だからと店に来たことも数える
程しかなかった。

ほとんどの高級クラブは週末が休みであ
り、そこは普通の会社と変わりはない。

玉も夜の世界に生きるプロだし、それに
緩いようでいて玉は人をよく見ているか
ら、彼が言うならきっとそうなのだと思
った。



本人に訊いていいのか?それとも知らん
ぷりをして今まで通りにつきあうか?



悩むところだったけれど、悪いことでは
ないし、玲さんが隠しているのだから無
理に訊くことは良くないと思っていた。

彼女が俺に言ってくれるまで待とう……

俺はそう決めた。









「宏光、好きな子いるでしょう?」

「え?」

「何となく……変わったわよね?」

「変わった?」

「そうよ。何だか色気も増したし」




「……気のせいじゃないですか?」

「気のせいねぇ」

「……」



クリスマスイブの今日、俺は都内のホテ
ルで客と会っていた。

今日の相手は、イブの夜、旦那が愛人の
元に行ってしまった可哀想な女。

ひとり寝の寂しさを埋めるために、毎年
俺を指名してくるんだ。もう今年で連続
三年になる。

ここには偽りの愛しかないのに……



「まあいいわ。でも、私といる時は他の
女のことを考えるのはやめてほしいの」


行為の後、上質なシーツの上で女は俺の
胸に頬を寄せていたけれど、体勢を変え
て俺の上に乗ってきた。

強いオリエンタルの香りが鼻腔を刺激す
る。





「あなたのことを考えてますよ」


俺の言葉に、彼女の眸がすーっと細く弧
を描く。



「ふふ、いつから嘘が下手になったの?」

「本当ですって」




「しー、黙って」


自分の唇に人差し指を当てた後、その指
を俺の唇に押し当てた。








海月 ki→←苦い思い出 ki



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (556 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
1624人がお気に入り
設定タグ:北山宏光 , 玉森裕太 , Kis-My-Ft2   
作品ジャンル:恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

裕太 - このみこ (2021年2月25日 9時) (レス) id: 25b3f023e7 (このIDを非表示/違反報告)
siori(プロフ) - にかみつばさん» にかみつばさん、こんにちは。こんなダークな話まで読んでくださり嬉しすぎます。これからミツの過去も分かってきますので楽しんでいただけると幸いです! (2020年6月28日 11時) (レス) id: 05c0397959 (このIDを非表示/違反報告)
にかみつば(プロフ) - こんばんは。こちらも読ませて頂いてます。別世界過ぎて主人公を自分に置き換えて読むのは難しいですが、玉ちゃんが好きだと思ってたので、黒川さんだとわかり、面白い展開にゾクゾクしてます。キスマイとか関係なく凄く楽しく小説を読ませてもらってます。 (2020年6月27日 22時) (レス) id: 74d56dba5b (このIDを非表示/違反報告)
siori(プロフ) - ミーさん» ミーさぁん(o^-^)ほんと、悲しい展開で……(T‐T)分かります、そこ!嫌な予感しかなかったですよね、わーん!ごめんなさいっ!そして迷いながらも読み続けてくださり嬉しいです。早く沼から出られるように更新していきますので、お付き合い下さると嬉しいです!(>_<。) (2019年2月24日 17時) (レス) id: 3e6044568e (このIDを非表示/違反報告)
siori(プロフ) - きたみなさん» きたみなさん、こんにちは(o^-^)このようなダークな話にも関わらず、そんな風に言ってくださってとても嬉しいです!これからも心情と情景の描写を丁寧に書いていきたいと思いますので、上手くはありませんが、楽しんで頂けるように頑張りますね!(´>///<`) (2019年2月24日 17時) (レス) id: 3e6044568e (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:siori | 作成日時:2018年12月11日 12時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。