ポインセチアの窓辺 3 -I treasure you-

44.離れよう ページ44

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それはみっくんの車だった。




「みっくん……」




一瞬、藤ヶ谷さんの顔に緊張が走る。
ドアが開き、みっくんがこちらに歩いてきた。




「こんばんは。今日は会社帰りに偶然佐藤さんに会って僕が食事に誘ったんです。遅くなったので送ってきました」




藤ヶ谷さんが挨拶すると「そうですか、ありがとうございます」と、みっくんは頭を下げた。




「じゃあ、僕もう行きますね」
「藤ヶ谷さん、今日はありがとうございました」
「うん。それじゃ」




それだけ言い、藤ヶ谷さんは帰って行った。




「二人で飯行ったの？」
「うん。ごめん……嫌だった？」
「飯くらいいいんじゃない？」




いつもより１トーン低い声は、怒っているようにも聞こえた。




「……うん」
「ちょっと車で話せる？」




何を言われるのか怖い。
暗くて、みっくんの表情がよく見えないから尚更不安だった。




「お茶飲んでく？」
「ちびがいるから」
「そっか……」




私は助手席に乗り込んだ。後ろでちびが尻尾を振っている。
みっくんは私を見るとゆっくりと話し出した。




「俺、昨日の事が気になってさ……色々考えた。最近のお前、様子がおかしいし昨日だってあんなに泣いて……俺のこと信じてるっての本心じゃないんだろ？」
「そんなことない……」
「A、俺といると辛い？」
「……ううん」
「俺たち、しばらく離れようか？」
「えっ？」




私は別れたくないから結さんのことを訊かないように、見ないようにしていたのに……
そんなこと言わないでよ、みっくんっ。




「別れたくない……」
「そうじゃないよ。俺はAと別れる気はないから。今の俺たちには気持ちを落ち着かせて、お互いの存在がどんなに大切かってことを考える時間が必要だと思ってる。離れるのはまた仲良くなるためだよ」
「仲良くなるため？」
「当たり前の存在だった人がいなくなった時、何を思ってどう感じるか考えたいし俺の器ももっと広げたい。そのためには１人になる時間が必要な気がするんだ」
「どのくらい……？」
「んー、やってみないと……」
「……」




そうなのかもしれない。
どうしても一緒にいるとイライラしてしまい、頭では分かっているのに思ってもいないような言葉を相手に浴びせてしまったり、思いもよらない行動をしてしまったり。


頭を冷やさないといけないのかもしれない。
１人の時間って、そういえばなかったな……






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