ポインセチアの窓辺 3 -I treasure you-

34.回想４　- 結 - ページ34

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私は置いてあった北山さんの鞄からレトリバーのキーホルダーを外し、その鍵につけた。
ヤキモチ焼きの彼女がこの鍵を見たらどういう反応をするだろう？
北山さんへの信頼を打ち砕き、不信感を植え付けたかった。


もう少ししたら、彼女が帰って来る。
ベッドの上には、仲良く並んだお揃いの枕。
きっと彼女が選んだんだろう。
北山さんの部屋にある彼女の痕跡が全て妬ましかった。
それから私はシャツのボタンを外すと、北山さんの隣に潜り込んだ。


ガチャ……
しばらくすると、玄関の方から物音がした。

彼女が帰って来た……！






“ あれ？どうしてちびいるの？今日はお留守番だったのかな？ ”




部屋を歩いている足音が聞こえる。




“ みっくん？ ”




寝室のドアが開いた。何の反応もない？
もしかして固まっちゃった？


私はゆっくり起き上がると、青白い顔をした彼女に話しかけた。こんなにも私の期待通りの反応を示してくれるなんて。
思わず笑いがこみあげてくる。




“ えっ……何でそれを結さんが持ってるんですか？ ”




私がキーホルダーを見せると、彼女はひどく狼狽した。





“ これ、北山さんから渡されたの。最近気持ちが変わったんじゃないかしら？だって人の心は変わるものでしょ？私の方が彼と居る時間長いのよ。帰るのはAさんの方じゃないですか？ ”
“ そんなことっ、…… ”




彼女の北山さんへの信頼が、音をたてて崩れていくのが手に取るように分かった。




“ 北山さんと別れてくれませんか？ ”




私の本心だった。
訴えるように彼女を見つめる。
１歩も引き下がるつもりはなかった。
彼女の眸からみるみるうちに涙が溢れ、部屋から飛び出すと玄関の閉まる音がした。


ふぅ……


それから数時間経ち、北山さんが目を覚ました。まだ具合は悪そうだけれど状態はさっきより大分いいみたいだった。




“ えっ、結さん？ ”




私を見て驚いた顔をしている。




“ 北山さんが高熱だったから、私、心配で帰れませんでした。それとさっきAさんが来たんですけど、私がいたから気を悪くさせちゃったみたいで……北山さんがひどい熱だって言ったんですけど、帰っちゃいました……私のせいです。ごめんなさいっ ”
“ えっ？……Aが？……気にしないで。俺から電話するから……今日はありがとう、結さんも遅いからもう帰って ”
“ はい ”




笑いが止まらない。
私は彼に鍵を返すと部屋を後にした。






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