秋の訪れ ページ49
．
言ってからすぐに、言わなければよか
ったと後悔した。みるみるうちに彼女の
顔が歪み、大粒の涙が零れ落ちたからだ。
「えっ、ごめんっ、ごめんねフキちゃん」
フキちゃんは、しばらくしゃくり上げ
るように泣いていたけれど、涙でぐしょ
ぐしょになった顔を上げ、泣き笑いのよ
うな顔になった。
「ほらー、おまえ鼻水拭けよ。それ俺の
服になすり付けるつもりだろ」
ミツは、グスリと鼻を啜ると、フキち
ゃんのリュックのポケットから小さいタ
オルを取り出し、彼女の顔をごしごしと
拭いてあげていた。
「またね、元気で」
赤い傘をくるくると回し、彼女は何度
も何度も振り返ると、微笑みながら私に
大きく手を振ってくれた。
その日の深夜、私は久しぶりに煙草を
吸いにベランダに出た。
雨は上がり、空には星が出ている。
私は煙草に火をつけると、深く吸い込
んでから、空を仰ぎ見るように吐き出し
た。
やっぱり落ち着く……
紫煙は白く少しだけ闇に広がり、すぐ
に夜の空気に溶けていった。
ヴヴヴ……
ミツからだった。
『もしもし……俺』
「ミツ、フキちゃんどうだった？」
『フキの父親にガツンと言っといた。こ
のままだったら、区役所の児童相談所
に行くしかないって言っといたわ』
「うん」
『ったく、継母は玄関に出ても来なかっ
たぜ。母親はあんなだし、父親は頼り
になんねーし……心配は尽きねぇよ』
「フキちゃんのこと引き取れるの？」
『ゆくゆくは、あいつを養子にしてーと
思ってんだけど、まぁ……いろいろあ
んだよ。正直難しい……父親もいいっ
て言わねーし、世間体ばっか気にしや
がって。まぁフキの気持ちもあるしね
……』
ミツの声を聞いていたら、無性にミツ
に会いたくなった。
「そっか……ねぇ」
『ん？』
「今から会えない？」
少しの間のあと
『ごめん……もう遅いから。明日から仕
事だし、今日はもう寝るわ』
そう返事が返ってきた。
「……そうだね……わかった」
『A』
「え？」
『いろいろありがとね』
「ううん、私……フキちゃんのこと……
家族みたいに思っているから」
『うん』
「あの……ミツ、おやすみなさい」
『……おやすみ、A』
電話は、私から切った。ミツから切ら
れたくなかったからだ。
私は二本目の煙草に火をつけると
その清澄な星空を見上げた。
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siori(プロフ) - Mielさん» Mielさーん、こんにちは！そうですね、今ちょうど辛いんですっ(T_T)フキちゃんほんと可愛いですよね、私の癒しです！移行しましたので、どうぞ♪ (2017年10月1日 15時) (
レス) id: a482fb1278 (このIDを非表示/違反報告)
Miel(プロフ) - sioriさんこんにちは。やっと読めました。最後のほうはちょっとツラくて泣きました。フキちゃん可愛いな。いろんなこと考えてるんだなって…。みんなが幸せになれるといいな…。続きも楽しみにしています。 (2017年10月1日 12時) (レス) id: 5ce7b7cc41 (このIDを非表示/違反報告)
siori(プロフ) - みっくん大好きえみこさん» 今ちょうど見てて(笑)私もできれば優しくしたかったので、おっしゃってくださり助かりましたぁ！えみこさんありがとうございますっ(^▽^;)ミツに浮気させちゃってごめんなさいっ(;^ω^)いつも辛い話を最後までありがとうございます！頑張りますね！ (2017年9月29日 19時) (レス) id: 031c2bcb7e (このIDを非表示/違反報告)
みっくん大好きえみこ(プロフ) - sioriさん、今 読みました。ミツの電話、少し優しくしてくれたんですね、ありがとうございます。少し気持ちが救われました。でも、なんか…申し訳なかったですね(^^; (2017年9月29日 19時) (レス) id: d81176af93 (このIDを非表示/違反報告)
siori(プロフ) - みんさん» みんさーん、ありがたいことですぅ〜！楽しみにしてくださってとてもうれしい！拙いながらも頑張らせていただきますね！(*´▽｀*) (2017年9月29日 18時) (レス) id: 031c2bcb7e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：siori
| 作成日時：2017年9月6日 14時
