養鶏場 ページ30
．
ニカちゃんは、しばらくそれをじっと
見つめていたけれど
「そんな急に言われてもっ、全く頭に入
ってきませんっ」
そう言い、太輔に泣きついた。
「しょうがないな、俺が注文するからい
いよ」
それにしても回転が早い店だ。酔っ払
いオヤジと入れ替わるように、次から次
へと客が呼ばれる。
「次の人、入って〜」
扉から顔を覗かせた、愛想のない店員
に呼ばれ、私たちは店の中に足を踏み入
れた。
噂には聞いていた有名店。一歩店内に
入るなり、その独特な雰囲気に飲まれそ
うになる。
美味しそうな匂いが漂う店内には、一
癖も二癖もありそうなオヤジたちが、所
狭しとひしめきあって酒を飲んでいた。
ただ誰もが小声で話し、大声で笑って
いる客は皆無だ。その異様な雰囲気に、
やっぱり一人で来なくて良かったと心底
思った。
「注文が聞こえないから、大声出したら
いけないらしいよ」
太輔が小声で教えてくれた。
ここはいわゆる”焼きトン屋”だ。焼き
トンとは、焼き鳥の調理法で豚肉を焼く
串焼きのことで、その中でも”紀成”は豚
のモツ(ホルモン)専門の焼きトン屋だ
った。
カウンターの中では、店主と思われる
眼光鋭いオヤジと、その他に２人の若者
がせっせと串焼きを焼いている。
私たち３人は、カウンターのド真ん中
に通された。
ひぇ〜なぜここに？
太輔とニカちゃんが、やっぱり浮いて
いる。私たちが入ると、一瞬店内はしー
んと静まり返った気さえした。
「お客さんっ、ハイボールは３杯までだ
から！待ってる客がいるんだよ。それ
と、あんまり酔っぱらうと出てっても
らうよ！」
店主がカウンターの客を怒鳴った。
え？飲み物を注文する回数まで決まっ
てるの？
そうか、ここでは客よりも店員のほう
が上なんだ。一癖も二癖もありそうな飲
んだくれてるオッサンたちも、眼光鋭い
店員には絶対に従う。
客たちは、どんなに時間がかかっても
ただ注文した物ができてくるのを、文句
を言うわけでもなく、ただじっと我慢し
て待つだけなんだ。
そう思うと、何だか、餌を待つ養鶏場
の鶏になった気分がした。
私、この店苦手かも。
「俺、あそこの隅の席で良かったのに」
ニカちゃんが小声で話しかけてくる。
「いいから、とっとと注文しよう」
太輔が、壁に貼ってあるメニューを見
ながら口を開いた。
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siori(プロフ) - Mielさん» Mielさーん、こんにちは！そうですね、今ちょうど辛いんですっ(T_T)フキちゃんほんと可愛いですよね、私の癒しです！移行しましたので、どうぞ♪ (2017年10月1日 15時) (
レス) id: a482fb1278 (このIDを非表示/違反報告)
Miel(プロフ) - sioriさんこんにちは。やっと読めました。最後のほうはちょっとツラくて泣きました。フキちゃん可愛いな。いろんなこと考えてるんだなって…。みんなが幸せになれるといいな…。続きも楽しみにしています。 (2017年10月1日 12時) (レス) id: 5ce7b7cc41 (このIDを非表示/違反報告)
siori(プロフ) - みっくん大好きえみこさん» 今ちょうど見てて(笑)私もできれば優しくしたかったので、おっしゃってくださり助かりましたぁ！えみこさんありがとうございますっ(^▽^;)ミツに浮気させちゃってごめんなさいっ(;^ω^)いつも辛い話を最後までありがとうございます！頑張りますね！ (2017年9月29日 19時) (レス) id: 031c2bcb7e (このIDを非表示/違反報告)
みっくん大好きえみこ(プロフ) - sioriさん、今 読みました。ミツの電話、少し優しくしてくれたんですね、ありがとうございます。少し気持ちが救われました。でも、なんか…申し訳なかったですね(^^; (2017年9月29日 19時) (レス) id: d81176af93 (このIDを非表示/違反報告)
siori(プロフ) - みんさん» みんさーん、ありがたいことですぅ〜！楽しみにしてくださってとてもうれしい！拙いながらも頑張らせていただきますね！(*´▽｀*) (2017年9月29日 18時) (レス) id: 031c2bcb7e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：siori
| 作成日時：2017年9月6日 14時
