暗雲 ki ページ22
．
フキが帰り、夏の終わりとともに俺に
も日常が戻ってきた。
フキがいた日々が当たり前になってい
たから、朝起きたときや店から帰って来
たときに、俺の部屋にあいつがいないの
はとても寂しい。
俺の部屋、こんなに広かったっけ？
あいつ、今ごろ何してっかなぁ……
やっぱり気になるのはフキのことだった。
９月に入ると、Aは忙しいらしく、
取材や打ち合わせで留守にすることが多
くなった。夏の皺寄せなのか、ここ何日
かは朝方まで執筆しているみたいだ。
Aは仕事の愚痴なんて言わなかった
けれど、フキがいることにより、彼女の
仕事に支障を来たしていたのかもしれな
い。
その日は、朝から今にも泣きそうな空
模様だった。少し前からぽつりぽつりと
雨の音がし始めたと思ったら、そのうち
にザーっと音を立てて雨が降りだした。
今年はすでにいくつかの台風が日本列
島に接近したが、途中で方向を変え、関
東に上陸することはなかった。
そういえば、また台風が近づいている
んだっけ……このまま進路を変えなけれ
ば、未明にも関東地方に上陸するかもし
れないとニュースで言っていた。
今日は、少し早めに店を閉めたほうが
いいかもしれねぇな……。
「キタミツ、本格的に降り出したね」
宮田が暖簾を入り口にかけながら、雲
母色に染まる不気味な空を見上げた。
＊
徐々に激しくなる雨音を聞きながら、
宮田と二人で開店の準備をしている時だ
った。
店の引き戸が少し開き、元気の良い声
がした。
「こんにちは！○○ビールの山田でーす」
少し開いた引き戸から、感じの良い笑
顔がひょっこりとのぞく。
「おぅ、山田くん！あれ？今日来る日だ
っけ？」
「いいえ、今日はご挨拶に伺いました」
「挨拶？――何だよ、まぁ入って」
「いいですか？」
彼はビール会社の営業マンらしく、若
くて礼儀正しく、ノリのよい男だ。
今から１年ほど前に、地方から転勤に
なり、俺の店を担当してくれていた。
「――入っていいって」
……？
外に誰かいるのか、入り口のところで
後ろに声をかけている。
「失礼します！」
山田くんに続き、遠慮しながら店に入
ってきた女性に、俺は思わず固まった。
え……？
なんで？
「実は１０月から担当が変わることにな
りまして、今日はそのご挨拶に伺いま
した」
．
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1526人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「Kis-My-Ft2」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
siori(プロフ) - Mielさん» Mielさーん、こんにちは！そうですね、今ちょうど辛いんですっ(T_T)フキちゃんほんと可愛いですよね、私の癒しです！移行しましたので、どうぞ♪ (2017年10月1日 15時) (
レス) id: a482fb1278 (このIDを非表示/違反報告)
Miel(プロフ) - sioriさんこんにちは。やっと読めました。最後のほうはちょっとツラくて泣きました。フキちゃん可愛いな。いろんなこと考えてるんだなって…。みんなが幸せになれるといいな…。続きも楽しみにしています。 (2017年10月1日 12時) (レス) id: 5ce7b7cc41 (このIDを非表示/違反報告)
siori(プロフ) - みっくん大好きえみこさん» 今ちょうど見てて(笑)私もできれば優しくしたかったので、おっしゃってくださり助かりましたぁ！えみこさんありがとうございますっ(^▽^;)ミツに浮気させちゃってごめんなさいっ(;^ω^)いつも辛い話を最後までありがとうございます！頑張りますね！ (2017年9月29日 19時) (レス) id: 031c2bcb7e (このIDを非表示/違反報告)
みっくん大好きえみこ(プロフ) - sioriさん、今 読みました。ミツの電話、少し優しくしてくれたんですね、ありがとうございます。少し気持ちが救われました。でも、なんか…申し訳なかったですね(^^; (2017年9月29日 19時) (レス) id: d81176af93 (このIDを非表示/違反報告)
siori(プロフ) - みんさん» みんさーん、ありがたいことですぅ〜！楽しみにしてくださってとてもうれしい！拙いながらも頑張らせていただきますね！(*´▽｀*) (2017年9月29日 18時) (レス) id: 031c2bcb7e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：siori
| 作成日時：2017年9月6日 14時
