ＪＥＷＥＬ ３

離れたくない ページ43

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「行こうか」

「うん」



　夜風にあたりながら三人でゆっくり歩
いていると、少し先にマンションの灯が
見えてきた。

　







「明日の夕飯、店に食いに来いよ」

「え？いいの？」

「あぁ、いいよ。待ってる」



「北山さん……」

「ん？」


「おやすみなさい」



「……うん、おやすみ。フキ、先に部屋
　入ってろ」



　フキちゃんは頷くと、私に手を振り部
屋の中に入った。






「Aちゃん……」

「え？」




その刹那、腕を引かれ北山さんの胸の中。


トクン



「俺を見て」



トクン、トクン



　見上げれば、私を切なげに見つめてく
る熱い双眸。

　胸がキューっと締め付けられるように
苦しくて、胸の奥が熱くなる。





「離したくねぇ……」



私だって離れたくない。


　熱く絡まる視線。頬を優しくなぞられ
そっと唇にその指が触れると、柔らかい
唇が重なった。


ちゅっ


小さいリップ音を立て、離れる唇。



「ごめん、まだ返事もらってないのに」

「北山さん……」



「おやすみ」

「……うん、おやすみ」



身体が離れ、最後まで繋がる指先……

それはそっと離れた。



「明日な」

「うん」


　北山さんはふわりと笑うと、部屋の中
に入って行った。








　部屋の中は、蒸し風呂のように暑かっ
た。急いでエアコンを入れ、冷蔵庫から
ビールを出して一口飲む。

ドクン、ドクンと大きく脈打つ私の心臓。

　考えるのは北山さんの事ばかり。身体
が熱くて、北山さんを求めている自分に
気づく。





　チャラいし、焼肉にバカみたいに熱い
し、下ネタ大好きで下品だし……

　だけど本当の彼は、仕事熱心で男気に
溢れ、努力を惜しまず……不器用だけど
実はとても優しい。

　彼と一緒にいるにつれ、いろんな彼が
見えてきて、もっともっと好きになる。



　北山さんと付き合って、フキちゃんと
三人で暮らしたっていい……

　フキちゃんだって成長するし、今後の
ことは誰にもわからない。だけどやっぱ
り二人と一緒にいたいよ。自分の気持ち
を大切にしたいと思った。


　北山さんに、それでもいい、一緒に居
させてって伝えよう。





太輔……



太輔との関係も宙ぶらりんのまま。

会ってきちんと伝えなくちゃ……。




　太輔は大人だ。私がどんな結論を出し
たとしても、仕事に響くことはないだろ
う。

　熱いシャワーを浴びたら、すぐに睡魔
が襲ってきて、この日はあっという間に
寝てしまった。






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