ＪＥＷＥＬ ３

日曜日 ページ36

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　次の日、網戸にへばりつくアブラゼミ
の鳴き声で目覚めた私。時計を見るとも
うすぐ１０時。

　それと同時に、枕元でスマホが震えだ
した。




―北山―




えっ？北山さんっ！

　昨日のことを思い出して、胸がドキド
キと鼓動を刻む。



『もしもしっ』


『はよ、起きてた？』

『今起きたの』

『そう。今日の予定は？』

『暇っ、暇だよ！』



　電話の向こうから、北山さんの微かな
笑い声が聞こえてくる。



『暇なのかよ』

『……北山さんっ』




『はい、なんすか』




『今日、会える？』

『会いたいの？』




『……会いたいよ』


そんなの決まってる。




『……俺も、すげぇ会いたい』



　すげぇ会いたいとか？やだ嬉しいっ…
スマホを耳にあて、ベッドの上で身悶え
るイタイ女。こんなに幸せすぎていいの
かな……？



『後１時間くらいで出かけるから用意し
　てくんない？』


え？出かけるって？どこに？



『どこに行くの？』

『詳細は後で見せるから』

『うん、わかった』



　私は飛び起きて、軽く朝ごはんを食べ
て着替えを済ませた。



　ふと、いつものように太輔からもらっ
たバレッタに手が伸びる。

　心苦しくて、北山さんと出かける時に
着けるなんてやっぱりできないや……

　私はそれを、元あった場所にそっと置
いた。









　しばらくしてインターフォンが鳴り、
ドアを開けるとニコニコ顔のフキちゃん
と、めっちゃ眠そうな北山さんが立って
いる。



「はよ」

「おはよう」


　なんだか、昨日の今日で彼に会うのが
恥ずかしい。



「フキちゃん、おはよう」


　フキちゃんはにっこり笑うと、私に一
枚の紙を見せてくれた。


「それ、フキが行きたいんだと。ダメも
　とでさっき電話して聞いてみたら、キ
　ャンセルが出たんだって」





私に差し出された一枚の紙に目を通す



【夏休み親子で作ろうキャラクターパン】


「パン教室？」



　なるほど、夏休みならではの企画だね
パン作りはめっちゃ苦手分野だけど、三
人で参加したら楽しそう！

　フキちゃんは、私を見てこくんとうな
ずき、何かをノートに書いた。



”ミツだけじゃ、しんぱい”

「ふふ、私も全然作れないよ」


”トト〇のパンだって”

「トト〇好きなの？」


”だいすき”

「私も好きだよ」



フキちゃんの顔が嬉しそうに輝く。




そっか……



　一緒に参加してくれるお母さんがいな
いフキちゃんは、私に甘えたいんだ。







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