ＪＥＷＥＬ ３

ありのままに ページ33

・









「いや、確かに強烈だったけど、もう消
　えてんだろ。汗くせーだけじゃね？」

「そ、そうかな？」




北山さんが手や身体をクンクンしている。

　そりゃそうだよ、納豆の臭いなんても
うしない。どうしていいかわからなくて
どうでもいい事を言っちゃっただけ。

　あんなキスされたら、何を話せばいい
かわからないし、ごめんって……

　北山さんの気持ちが知りたいけど、私
も気持ちをきちんと伝えなきゃと思った。




「……」

「……」



　シーンとするダイニング。アニメの声
が、隣の部屋のテレビから聞こえてくる
だけだった。



「あの……さ」
「あのっ」




二人同時に声が出た。




「いいよ、先どーぞ」

「北山さんからどーぞ」





「じゃあ……俺から言うわ」



「うん」




　北山さんは、今まで見たこともないよ
うな硬い表情になった。





「なんつーか、突然キスして……ごめん」

「……うん」





「俺のこと、チャラいって思ってるかも
　しんねーけど、今のは違うっていうか」

「……」




　北山さんは眉間に皺を寄せ、一瞬唇を
噛みしめた後、私を切なげに見つめた。



「キスしたのは、Aちゃんとキスした
　いって思ったからなんだけど……俺、
　すげぇ気になんだよ、Aちゃんの事
　が気になってしかたねーの。いない時
　でも笑顔浮かんだり、声聞きたいって
　思ったりすんだよ」




え……？




「ここずーっと、ベランダにも出なかっ
　たのは……自分の中で考えることがあ
　ってさ、頭ぐちゃぐちゃだったからな
　んだけど……俺――」





――そして

　切なげに揺れる双眸が、真っすぐに私
を見据えた。









「俺……、さ、Aちゃんが好きみたいだ」









あまりに驚き、心臓が大きく跳ねる。



トクン





「北山さんっ」


「ん？」





トクン、トクン



「私も同じなの。この前だって美咲ちゃ
　んが来て、泊まったのかと思ったら胸
　が苦しくてっ、だけど私には関係ない
　ことだから……聞けなくて、苦しかっ
　たの。それから全然会えないし、お店
　にも行きにくくなっちゃって……だか
　ら今日は会えてすごくうれしかった。
　――私も北山さんが好きみたい……」




トクン、トクン、トクン

やっと言えた……っ







「くそ緊張したわ……」

「うそっ」


北山さんにホッとしたような笑みが戻る






「ほんと……」
　


　甘い声で囁かれ、私はゆっくり目を閉
じた。





・

一緒の未来→←止められない気持ち

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す